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一部の購入できる図書には、bk1(ビーケーワン)およびAmazon.co.jpへのリンクを張りました(書評のあるものを優先)。お買い物にお役立てください。(2004.8/14) |
いきなりですが、「あんたがた どこさ」というわらべ唄を知っていますか?
この唄と同じタイトルのわらべ唄絵本を買ってきて、夫に見せたら、「最後が違う」と言うのです。
「あんたがた どこさ/ひごさ
ひご どこさ/くまもとさ
くまもと どこさ/せんばさ
せんばやまには たぬきがおってさ
それを りょうしが てっぽで うってさ
にてさ やいてさ くってさ」
この後、どういう歌詞でしたか? わたしは、
「それを このはで
ちょっと かくせ」
と覚えているのですが、静岡出身の夫はなんと、
「にてさ やいてさ くってさ
うまかの さっさ」
というのだそうです!(当然、ふしも違います。)
ちなみに、この本には、下のように出ています。わたしのバージョンと似ています。
「それを このはで ちょいと かぶせ」([pp.2-3])
わたしはこの唄をいつどうやって覚えたのか記憶にありませんが、横浜で生まれ育ったどこかの過程で、耳からか本からか知ったに違いありません。なぜか「まりつき唄」だと知っているので、きっと絵本からだったのだと思いますが…。(確か、「〜さ」という所で、まりを足の下をくぐらせる。最後、「ちょっとかくせ」の所でスカートにまりを隠す…のだったように思う。)
わらべ唄の絵本というのは、意外に目にしません。保育園とか幼稚園とかにはあるのでしょうが、伝承的な遊びが子供集団で伝わっていかない現代では、滅びつつあるものとして記録し、保存していかなければならないのかもしれません。だからこそ研究書ではなく、今、子どもが遊んでいる遊び歌やわらべ唄の、子ども向き実用絵本は貴重です。
子どもの本の新聞書評をチェックしているとき、読売新聞(2002.7/18)の「わらべ歌で遊ぼう」という記事に、数冊のわらべうた絵本が紹介されており、これはひとつどんなものか見てみたいと思いました。
渋谷の児童書専門店「子どもの本の店(童話屋の後継店)」がなくなってから、こういう本を探すとき苦労するのですが、銀座の教文館の「子どもの本のみせ ナルニア国」で、紹介されていた本の一部を見つけることができました。それがこの絵本です。
『あんたがた どこさ −おかあさんと 子どもの あそびうた−』(bk1。書評あり) (アマゾン。書評あり)
真島節子 絵 こぐま社 1996 ISBN4-7721-0137-3 1200円+税
(姉妹編『あがりめ さがりめ』(bk1。書評あり) (アマゾン。書評あり) もあり)
この絵本(2冊とも)には、15編の唄が出ており、付録に参考楽譜集も付いています。(15編といっても、最後の見開きに出ている「ゆうやけ こやけ あーしたてんきに なーあれ」「かえるが なくから かーえろ」「いちばんぼし みーつけた」の三つを「いっぱいあそんだ かえりみちで…」のタイトルの下にまとめて1編扱いしているので、実質17編。)知らない唄も6つありましたが、知っている唄にも異変があります。
「おてらの おしょうさんが かぼちゃの たねを まきました
めがでて ふくらんで はーながさいて じゃんけんぽん!」
という唄が、いつの間にか、次のように掲載されているのです!
「おてらの おしょうさんが かぼちゃの たねを まきました
めがでて ふくらんで はながさいて かれちゃって [!]
にんぽうつかって そらとんで [!!]
とうきょうタワーに ぶつかって [!!!]
ぐるりとまわって じゃんけんぽん」([pp.6-7])
実は、今年の春、職場でこの唄が話題になったとき、係の一番若い人(30代初め)まで全員、短い形で覚えているのに、「先日電車の中で小学生が長い形のを歌っていた。」と言う人がいて、インターネットで検索したら、やっぱり「最近、長く変わっちゃってる!」と驚いている報告がたくさんあったのです。何人もの人からいろいろな変形が報告されており、上記の形に最も近いものは、
「『お寺の和尚さんしよう。』と息子。先日の読み聞かせの講演会で教えてもらったのだが、今まで歌っていたのと違ってて、息子はそれにはまってしまった。とありました。「読み聞かせの講演会で教えてもらった」「今まで歌っていたのと違ってて」というのがポイントかな。
お寺の和尚さんが かぼちゃの種をまきました
芽が出て膨らんで花が咲いて 枯れちゃって
忍法使って空飛んで 東京タワーにぶつかって
ぐるぐる回して ジャンケンポン」
わたしは3月に6つ年下の従兄弟の娘(6歳)から初めて聞いてのけぞったのですが、その後5月に、姪(MCBT座娘・6歳)にも確認したら、ほとんど同じ。
「せっせっせの よいよいよい
おてらの おしょうさんが かぼちゃの たねを まきました
めがでて ふくらんで はーながさいて かれちゃって
にんぽう つかって そらとんで
とうきょうタワーに ぶつかって
ぐるぐるぐるぐる じゃんけんぽん!」
TVの幼児番組とかで後半を作って、全国的に波及したんじゃないかと思うんですが…。既に、1996年に絵本に載るほど普及しているのかと思うと、なぜかショック…。
夫と歌詞が違った「あんたがた どこさ」は地域差だと思えるのに、この「おてらの おしょうさん」のロング・バージョンは、訂正したい気がするのは、どうしてでしょう? あなたが知っている唄は、どういう歌詞ですか?
実は、ここまで書いてきてから、「あんたがた どこさ」がどこのわらべ唄か知りたくなり、調べました。
「<あんた方どこさ>は、近代になってからの誕生らしく、昭和十年代に全国にひろがりました。」(上笙一郎著『日本のわらべ唄−民族の幼なごころ−』三省堂 1972 p.73)「『あんたがたどこさ』も全国的に有名なまりつき唄で、戦前は関東・関西で歌われていたが、戦後、各地で流行した。」(『ふるさとあそびの事典』東洋出版 1976 p.17 アマゾン bk1 ##リンクはいずれも1998年改訂『図解ふるさとあそびの事典』のもの。2004.8/14追記)
他に、「東京」と書いてある本もありました。わたしはてっきり、九州のどこかだと思っていたのですが…。
遊び方の説明の部分で、後者の本に「『それを木の葉でちょいとかくす』のところで、まりを袖やスカートの下にかくす」とあるのは、わたしの記憶通りなのですが、続けて、「この部分の歌詞は各地でまちまちで、『お茶のこさいさい』『菜の花ちょい』『ああうまかったとさ』などと歌うところもある。」とあって、夫の記憶と近い形も紹介されていました。
それより、驚いたのは、前者の本に掲載されている歌詞です。
「煮てさ 焼いてさ 食ってさ
骨を菜の葉で ちょいと かぶせ」
「骨」だったんです! 「ちょっと隠」したわけです!
なお、こちらの本には、遊び方の説明に、
「『骨を菜の葉で ちょいとかぶせ』とうたい終わるところで、ついていた毬を着物の袖またはスカートの下へかくし、完全にかくしきったのが良いとされます。」とあります。へー、そうだったんだ、完全に隠しきるんだったんだ…「骨」だもんねと思った次第。
ついでに、「お寺の和尚さん[全国]」も調べたら、前者の本の方だけに出ていました。「手合わせじゃんけん」の項に、他4編とともに出ています(p.113)。もちろん、わたしが知っている短い形です。少なくとも1972年ころは、こうだったようです。
いったい、1996年に『あんたがた どこさ』が出版されるまでの間の、いつ頃から「とうきょうタワー」「にんぽう」などが加わったのでしょうか…??