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最近読んだファンタジー

現在でも、購入できる図書には、オンライン書店「bk1」へのリンクを張りました。お買い物にお役立てください。表紙画像は、「bk1ブリーダー」として、又は出版社から許諾された範囲で使用しています。(2005.1/9)






 出た! 苦しい時の「最近読んだ本」原稿。今回は、ハリポタ・ブームの余波で、次々訳される(主に児童文学の)海外ファンタジーの一端をご紹介。1970年代の埋もれていた作品まで今翻訳されているのは、なかなか有り難い。

< 目 次 >
サブリエル 古王国記T 冥界の扉 だれも猫には気づかない
盗まれた記憶の博物館 デルトラ・クエスト
光をはこぶ娘 マットの魔法の腕輪
家の中ではとばないで! アンブラと4人の王子
ダークホルムの闇の君 アルテミス・ファウル 妖精の身代金
エルフギフト 水晶玉と伝説の剣
読もうと思っているが未読のファンタジー
ふたりのアーサー サークル・オブ・マジック
バビロン・ゲーム ケルトとローマの息子
魔術師マーリンの夢 レイチェルと魔導師の誓い


『サブリエル 古王国記T 冥界の扉』ガース・ニクス作、(c)1995,主婦の友社、2002
サブリエル(古王国記 1)
ガース・ニクス著・原田勝訳
 川崎図書館では大人の本に分類されていた。ただし主人公は18歳の女の子で、まあヤングアダルト向け文学。主婦の友社からこんな本が出るのは珍しい。古王国では、チャーター魔術というものが世界の秩序を保っている。サブリエルは隣国のアンセルスティエールの寄宿学校で育ったが、チャーター魔術師の父から冥界を行き来することも学んでいた。実は、古王国はチャーター魔術の要である王族が途絶え、化け物や死霊の跋扈する世界と成り果てていた。父は古王国を救うべく努力していたが消息を絶つ。サブリエルは父を探しに14年ぶりに帰郷し、自らの家系もまた古王国の要だという使命を自覚する。死霊を操る7つのハンドベル、9つの門で分けられた冥界が面白い。三部作の第一部。

『だれも猫には気づかない』アン・マキャフリー作、(c)1996,創元推理文庫、2003
だれも猫には気づかない(創元推理文庫)
アン・マキャフリー著・赤尾秀子訳
 アメリカSF界の女王が贈る中世ヨーロッパの架空の国エスファニアが舞台のおとぎ話。若き領主ジェイマス5世が隣国の領土拡張主義者の陰謀を切り抜けた賢明な判断の陰には常に、亡き摂政の飼い猫ニフィの助けがあったのだ! 握手だけで毒殺する相手にも?!



『盗まれた記憶の博物館』(上、下)ラルフ・イーザウ作、(c)1997,あすなろ書房、2002
盗まれた記憶の博物館 上
ラルフ・イーザウ著・酒寄進一訳
盗まれた記憶の博物館 下
ラルフ・イーザウ著・酒寄進一訳
 『ネシャン・サーガ』の作者の次作。何者かの陰謀で、大事な記憶が失われつつある。父の記憶がないことに気づいた双子の姉弟が、現世および失われた記憶の国「クワシニア」でそれぞれの才能を生かして謎に挑む。姉のジェシカは理系の才能で、黒幕クセハーノの真の名前を見つけるため父の日記から暗号を解読しようとし、弟のオリバーは芸術の才能でさらわれた父を助けにクワシニアへ。クセハーノが盗もうとしている記憶の最たるものがホロコーストというのは、ドイツの作家ならでは。

『デルトラ・クエスト』1〜8 エミリー・ロッダ作、(c)2000,岩崎書店、2002〜2003
 小学生の男の子に大人気。ケバケバしい表紙イラストに大人は顔をしかめそうだが…。デルトラ王国の失われた7つの宝石を取り戻し、影の大王から解放するため、前国王の親友の息子リーフは旅に出る。宝石を守る怪物も一巻に一匹ずつ登場し、必ずパズルがイラスト付で出てくる。たいへん読みやすい。シリーズものではなく8巻でひとつの物語。
デルトラ・クエスト 1 沈黙の森
エミリー・ロッダ作・岡田好惠訳・はけたれいこ画
デルトラ・クエスト 8 帰還
エミリー・ロッダ作・岡田好惠訳・はけたれいこ画







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『光をはこぶ娘』O.R.メリング作、(c)2001,講談社、2002
光をはこぶ娘
O.R.メリング作・井辻朱美訳
 11歳のダーナは、妖精王の伝言を届ける役目を引き受ける。というのも現実世界では、ダーナは失踪した母を探したいのに父がカナダに帰ると言い出し、一方、妖精の使者は、この役目を果せば望みをかなえると約束したからだ。アイルランドが舞台だと、現実世界と妖精の世界はこんなふうに重なっているのだと妙に説得力がある。

『マットの魔法の腕輪』ニーナ・キリキ・ホフマン作、(c)1999,創元推理文庫、2002
マットの魔法の腕輪(創元推理文庫)
ニーナ・キリキ・ホフマン著・田村美佐子訳
 大人向けFT。マットは大人になってから、物の話を聴く力が現われた。以来、放浪生活をしている。彼女はある冬、不思議な力を持つ男エドに出会う。精霊の導きで困っている人や物に力を貸しているという。一緒に旅をしているうちエドの過去に空白があることがわかる。彼の唯一の理解者である妹の家に行くと、そこには魔法の糸があふれており、マットに“なついて”金の魔法の腕輪になる。腕輪の力を使いながらマットとエドは過去の空白の鍵を握るエドの幼馴なじみスーザンに会いに行く。風変わりな味わいの作品。

『家の中ではとばないで!』ベティ・ブロック作、(c)1970,徳間書店、2002
家の中では、とばないで!
ベティー・ブロック作・原みち子訳・たかおゆうこ絵
 アナベルは言葉を話せる小さな小さな犬グローリアに、両親がそのうち迎えに来ると聞かされて育てられた。10歳になったある日、骨董屋で猫から「お前は妖精なんだから肘がなめられるはず」と言われ、やってみるとできる。半信半疑のアナベルは飛べることもわかって有頂天。だけどグローリアは悲しそう。人間か妖精かの選択は、グローリアが秘密にしているアナベルの生まれと関わっていた。

『アンブラと4人の王子』アン・ローレンス作、(c)1973,偕成社、2002
アンブラと4人の王子
アン・ローレンス作・金原瑞人訳・佐竹美保絵
 ヨーロッパの架空の小国ベルガモット公国の公女アンブラは隣の大国エバーニアの4人の王子とは幼馴染み。王子たちが代わる代わる訪問して、自分の得意分野(学問、音楽、外交)を披露すると、若者らしく、すぐ影響される所がおかしい。4人からの求婚にアンブラが出した条件とは…?!



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『ダークホルムの闇の君』ディアナ・W.ジョーンズ作、(c)1998,創元推理文庫、2002
ダークホルムの闇の君(創元推理文庫)
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著・浅羽莢子訳
 闇の王を倒すサーガは、チェズニー氏がダークホルムの住人に無理に協力させて仕立てた観光ツアーだった! ダークホルムを興業界として支配するチェズニー氏に力を与えているのは何か? 柄でもない「闇の君」の役を割振られて四苦八苦の魔術師ダークと彼の魔術で生まれた“子どもたち”のグリフィンたちの奮闘がおかしい。二部作の第一部。


『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』オーエン・コルファー作、(c)2001,角川書店、2002
アルテミス・ファウル
オーエン・コルファー著・大久保寛訳
 悪事が家業のファウル家の跡継ぎの少年アルテミスは、妖精の秘密を書いた「ブック」を入手し、得意のコンピュータで妖精語を解読。そのため妖精警備隊のホリーはつかまってしまう。アルテミスとホリーが交互に語る形。妖精は古来の力も保っているが独特の科学力も備えているのが面白い。主人公の一方が「悪人」なのも異色。本の表紙は、この話が第一部であると妖精文字で書いた装幀になっている。解読の鍵は…お楽しみ!

『エルフギフト』(上、下)スーザン・プライス作、(c)1996,ポプラ、2002
 『ゴースト・ドラム』の作者の作品なのに、楽しめなかった。上下巻の大部な本なのでつらかった。主人公のエルフギフト(亡くなった王と妖精の間の王子)が全然人間的なところがなく、他にもあまり好感の持てる登場人物がいない。ワルキューレに鍛えられる話や、死んでからの部分の方が神話的で面白い。
エルフギフト 上 復讐のちかい(ポプラ・ウイング・ブックス 8)
スーザン・プライス作・金原瑞人訳
エルフギフト 下 裏切りの剣(ポプラ・ウイング・ブックス 9)
スーザン・プライス作・金原瑞人訳







『水晶玉と伝説の剣』ヴィクトリア・ハンリー作、(c)2000,徳間書店、2002
水晶玉と伝説の剣
ヴィクトリア・ハンリー作・多賀京子訳
 初めに出てくるお后様がふがいなかったけど、最後で地味に抵抗するところがよい。

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< その他、読もうと思っているが未読のファンタジー >

『ふたりのアーサー 1 予言の石』ケビン・クロスリー=ホランド作、(c)2000,ソニーマガジンズ、2002
 もたもたしているうちに、『2 運命の十字』も出てしまった。

『サークル・オブ・マジック 魔法の学校』デブラ・ドイル&ジェイムズ・D.マクドナルド作、(c)1990,小学館、2002
 これも『2 邪悪の彫像』が刊行ずみ。帯の惹句によれば「英国FTの決定版」とか。

『バビロン・ゲーム』キャサリン・ロバーツ作、(c)2002,集英社、2002<
 派手な色使いの表紙。

『ケルトとローマの息子』ローズマリー・サトクリフ作、(c)1955,ほるぷ、2002
 歴史FTと出ているので含めた。『黄金の騎士フィン・マックール』より面白いらしい。

『魔術師マーリンの夢』ピーター・ディキンスン作、(c)1988,原書房、2000
 昔読んだウェザーマンガー3部作のひとつか?

『レイチェルと魔導師の誓い』クリフ・マクニッシュ作、(c)2002,理論社、2002
 『レイチェルと滅びの呪文』『レイチェルと魔法の匂い』に続く3部作の完結編。


(『ぱろっと通信』No.82 (2003.4.1発行)より転載)