ふしぎなえ 福音館書店、1971
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扉ページの絵からして変だ。開いた本の表紙の上に、小人が立っているが、まるで本の内側に
立っているようだ。最初の見開きの楽隊は、鳥瞰図と思えばいいが、次の家では、小人たちにだけ重力の法則が上下逆に働いている。鍋や電球は
素直にぶら下がっているのに、小人たちは、屋根の内側で滑り台をしていたり、階段の裏側に腰掛けていたり、軒から屋根の方へぶら下がったり
している。8の字に交差している無限階段はなぜか両方とも上り階段。迷路の入口と出口では重力の向きが逆になっていたり、歩道橋を上って
いくといつの間にか裏側に立っていたり、横からの断面図と上からの断面図が同居していたり、水道の蛇口から出た水が川となって町中を流れ、
最後にまた水道管の後ろのじょうごに降り注ぐ無限水道…。いろいろな錯視や、平面ならではの「ふしぎなえ」。裏表紙では、鏡文字でタイトル
が印刷されているという懲りよう。初めは雑誌『こどものとも』1968年3月号として描かれた、文字なし絵本。
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ABCの本 へそまがりのアルファベット 福音館書店、1974
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「へそまがりのアルファベット」というサブタイトルどおりの、一筋縄ではいかないABCの本。見開き左に、木で作られたABC
…の文字。これがそもそも「へそまがり」で、ありえない形でつながっている。右ページには、ABC…の頭文字で始まる物が真ん中にひとつ。
「A」の「金床 (Anvil)」は難しいが、「B」の「自転車 (Bicycle)」、「C」の「壁時計 (Clock)」など比較的わかりやすい。もちろん、
物の絵のほうにも、いろいろ仕掛けがあるので、ついついじっくり見てしまう。ページの周囲を飾る植物と動物は、白黒のイラスト。ABC…で
始まるものが描かれている。巻末の「てびき」に、各ページに出てくるものの綴りがリストアップされているので、「A」に「蟻 (ant)」なんて
いたかな? など何度も楽しめる。「S」の「天秤ばかり」は、『安野光雅の画集』にも出てくる「ひとをはかるはかりでじぶんもはかられる」。
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あいうえおの本 福音館書店、1976
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『ABCの本』と同じ作りだが、木製の文字の方は、実際に作れそうだ。右ページ真ん中のイラストは、
ちょっと懐かしい日本を思わせる物が多い。「いえ」は茅葺き屋根で、「おめん」はおかめと赤鬼。「け」は剣玉で、「そ」はそろばん。ページの
周囲を飾る白黒の植物と動物は、今度は日本語だから、巻末の「てびき」を見ないでどれだけあてられるか探したい。(しかも、「てびき」
の最後には、「このてびきにないものも、いくつかみつけられます。」とある!)「ぬ」と「め」、「は」と「ほ」、「る」と「ろ」には、
「P」と「R」と同じ工夫が。「さ」は桜の木とか、「み」には溝があり、「む」には虫食いがあるとか、後で見直すと気づくこともいろいろ
あって飽きない。表紙の目録カードケースのような引き出しには、「あ」「い」「う」…と書いてあり、裏表紙の「わ」「ん」「を」まで続く。
本を開けると見返しと扉の間のページに、引き抜かれた「あ」の引き出しが描かれていて、中には「あ」と書かれた薬包紙がたくさん入って
いる。本の後ろ見返しの前のページには、やはり引き抜かれた「ん」の引き出しが描かれていて、一見整合性があるが、実は、「ん」の引き出し
の横に…仕掛けがあるのだが、読んでのお楽しみ!
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もりのえほん 福音館書店、1981
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文字なし絵本。一見、ただの風景画に見えるが、安野光雅なのでそんなはずはない、とページをめくりながら目をこらすと、
突然、マントヒヒの顔が見えたりする。そうすると戻って全ページ、本を上下逆にしたりして、くまなく見る羽目に。何かいそうなところには、
もちろん、何かいます。ワニとオオハシが並んでいたり、ライオンやパンダは簡単だけど、どくろは見つけられるかな? 魔法使いもいるよ。
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