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マザーグース学会第9回全国大会


2006年12月10日(日)
於:茨木市立生涯学習センター きらめき

目次

研究発表  講演   展示
 

    ※なお、ここに掲載した研究発表や講演の 概要は、あくまでも筆者個人のメモに基づき、そのごく一部をまとめたもので、学会の 公式の記録ではありません。(2007.1/9)


研究発表

1. 岡本文弥編『おとぎの世界』の訳業――『まざあ・ぐうす』以前の四篇 ―
  高屋 一成
  北原白秋の『まざあ・ぐうす』(大正10年、アルス)は、児童文学雑誌『赤い鳥』に連載したものを改訳したり、その他に訳したものを加えたりして刊行された。これ以前のマザー・グース訳としては竹久夢二の手になるものが知られているが、他にはどんなものがあるのか。大正7年創刊の『赤い鳥』に続いて大正8年に創刊された『おとぎの世界』にも、無署名だが、大正8年7月号に「月の世界の叔父さんが」の訳が載っている。これは、『赤い鳥』に初めてマザー・グース訳が掲載された大正9年1月号より半年ほど早い。他に、「一、二、三! 兎を生捕つた」(8月号)、「曲つた人がをりまして」(9月号)、「おききな おききな いぬがほえる」(11月号)の計4篇が掲載された。

2. 高校生にマザーグースを! CALL教室の可能性を探る
  鳥山 淳子
  「CALL教室」とは、Computer Assisted Language Learnigのことで、LL機器をコンピューターに組み込んだもの。これを使って、高校生たちにマザー・グースの唄をひとつずつ割り当て、生徒たちはインターネットの検索やコンピューター内のイラストを使ったりして、自分のマザー・グース訳を完成させる。教師の方では、各自の制作途上を切り替えて見ることもできるし、生徒のコンピューターに設問を配信したり、個別のやりとりなどもできるようになっている。発表では、実際の様子をスライドで見せてもらった。

3. 心理療法に貢献するマザーグース
  松村 恒
  ユング派の心理療法では、無意識の統合に「象徴」が用いられる。おとぎ話・昔話には、民族の集合的無意識が表現されている。そこには、無意識の解釈と統合を可能にする「象徴」が見られる。昔話と同じ伝承文学であるマザーグースにも、類似の機能があると予想される。ウィニコット(イギリスの心理学者)の臨床方法を解説したものによれば、患者と治療者がともにナンセンスな童謡を楽しむことで言語による意味づけの圧迫感からの解放、音の響き・同音の繰り返しといった音声面の快感が、常識的規格からの解放を与え、患者の心理の安定に貢献することが報告されている。

4. アメリカマンガの中のマザーグース
  弘山 貞夫
  アメリカのひとコママンガには、多くのマザーグースが登場する。会報に報告された何人かの作家の作品を紹介する。マーク・パリシの「Off the Mark」(インターネット上で読める)。ビル・キーンの「The Family Circus」(ビル・キーンのホームページで最近1ヵ月分が読める)。ハンク・ケッチソンが描き始め、フェルディナンドとマーカス・ハミルトンが引き継いだ「Dennis the Menace」。デイヴ・ワモンド(この人はカナダ人)の「Reality Check」。ボブ・テイヴスの「Frank & Ernest」。
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講演  マザー・グースとイギリス・ロマン派詩人  ウィリアム・ワーズワース (1770-1850)
  豊田 恵美子 先生(イギリスロマン派学会理事、オックスフォード大学客員研究員)
 
    ロマン派の詩人は、自由に自分の言葉で詩を書いた、という点で伝統の破壊者だった。そしてバイロンもシェリーもキーツも25歳くらいまでに才能を開花させ、若死にだった。ワーズワースだけが長生きし、30歳以降は、駄作も多くなった。ワーズワースにとっての詩のインスピレーションは、幼児体験の鮮烈な想起ができるときだった。
    「形成一転(The Tables Turned)」には、マザー・グースの「男の子、女の子、出ておいで(Boys and girls come out to play)」のイメージが見られる。「私は一人でさまよっていた(I wandered lonely as a Cloud)」には、複数のマザー・グースの影響がある。「3月は強い風が吹く(March brings breezes)」というマザー・グースの中の「dancing daffodil」という用語が使われている。また「かわいい水仙(Daffy-down-dilly)」のイメージもある。さらに、発表年では「キラキラ星(Twinkle twinkle little star)」より一年早いが、そのイメージも見られる。ジェーン・テイラーが「キラキラ星」を既存の詩を元に創作したと考えれば、あり得ること。「私の心ははずむ(My heart leaps up when I behold)」には、「私が幼い頃(When I was little boy)」というマザー・グースのシニシズムの優れたパロディが見られる。また、初めの二行を朗読すると、「キラキラ星」とぴったり同じリズムであることがわかる。「かっこう鳥に(To the cockoo)」には、「かっこうはかわいい小鳥(The cuckoo)」というマザー・グースの影響があるのに加え、「トムは笛吹の息子(Tom, he was a piper's son)」の中の「Over the hills and far away」のフレーズのイメージもある。その他、「サイモン・リー 老いたる狩人その関係した事件とともに」には、肩すかしのマザー・グースの伝統が息づいている。

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展示
ルーシー・カズンズの絵本とグッズ 関西支部手作りのハンプティ・ダンプティほか
 
関西支部手作りのミニブック 関西支部手作りのマザーグース・グッズほか
 
関西支部手作りのマザーグース・カレンダー 関西支部手作りのトールペインティング作品ほか
 
生徒たちの訳したマザー・グース 白秋の『まざあ・ぐうす』が収録された『白秋全集』


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