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マザーグース学会第10回全国大会
−20周年記念大会−


2008年12月7日(日) 10:00〜16:00
於:世田谷区・北沢タウンホール スカイサロン(12F)

マザーグース学会第10回大会ポスター by ナギカツオ

by ナギカツオ
      目次
  研究発表
  学会20年の歩み
  講演
  展示

    ※なお、ここに掲載した研究発表や講演の 概要は、あくまでも筆者個人のメモに基づき、そのごく一部をまとめたもので、学会の 公式の記録ではありません。(2008.12/11)

研究発表

1. 近代日本の歌謡とまざあ・ぐうす ― 白秋の童謡観の形成をめぐって ―
  平 竜彦
  北原白秋の研究家には、『まざあ・ぐうす』は重視されていない。しかし、この翻訳体験こそが白秋の「童謡観」の形成に大きな影響があったのではないか。「Hickory Dicory Dock」を訳した「一時」(初出時には「柱時計」)という作品は、「いっちく たっちく おうやおや」と始まる。これは、「わらべうた(=子供の民謡)」によく見られる「四四五」のリズムであり、また、神奈川県の縄跳び唄「いちく、たちく、たへいどん」の文句を取り入れている。「There was an old woman, and what do you think?」も「どうしたことだえ、このお婆」と、四四五のリズムを反映。白秋は「童謡」を唱歌風のものから「郷土的民謡」の本来の形に戻さなければならないと考えていた。『まざあ・ぐうす』の「巻末に」で白秋は「マザア・グウス」を「英国童謡の本源」と書いている。そこで、民謡の「四四五」のリズムで訳したのである。

2. サイモンとガーファンクルとマザーグースと ― S&Gサウンド3つ目の伝承童謡 ―
  高屋 一成
  サイモンとガーファンクルの曲「スカボロ・フェア」と「4月になれば彼女は」に、マザー・グースの唄が取り入れられているのは、よく知られている。前者には「The cambric shirt」、後者には「The cuckoo」である。しかし、もうひとつ、マザー・グースの唄の響きが聞こえてくる曲があるのではないか? それは、第1アルバム収録の「スパロウ」である。この曲は、「Who killed Cock Robin?」というマザー・グースなしには、成立しなかったのではないか。各連冒頭の「Who will love a little sparrow?」という問い掛けに、「Not I」や「I will」と応える形のところにその響きが聞こえる。
  ギターによる実演付きでした★

3. Mallarme, Recueil de "Nursery Rhymes" の意義
  松村 恒
  ステファン・マラルメ (1842〜1898) は、ヴェルレーヌ、ランボーと並ぶフランスの象徴派詩人。本業は英語の教師で、リセの英語教師を定年まで勤め上げた。その作品Recueil de "Nursery Rhymes" は、日本でも抄訳が2種類出ているが、原書の意図が反映されていない。原書はまず、英語でマザー・グースの唄が書かれ、次にマラルメ先生によるフランス語の散文で、唄についてのコメントがある。その後に英語原詩の文法的「語釈」があり、最後の「Devoir (学ぶべきこと)」には、コメントの中のフランス語を英訳する際の注意が記されている。この構造を見ればわかるとおり、これはマザー・グースの翻訳集ではなく、マザー・グースの唄を素材にした、仏文英訳の教材なのである。和訳『マラルメ先生のマザー・グース』(長谷川四郎訳、 晶文社)、『マラルメ全集』III (高橋康也訳、筑摩)はいずれも、「語釈」と「Devoir」が省かれて いる。

4. Tommy Thumb's Song Book の"Mistress Mary"の"Sing Cuckolds all a row"について
  安藤 幸江
  「Mistress Mary」の唄の最終行は、Tommy Thumb's Song Book (1794)では「Sing Cuckolds all a row」である。しかし、「cuckold」は「寝取られ男」の意味で、童謡にはふさわしくない。実は「Cuckolds all a row」という当時流行ったダンス曲があり、「Sing」の前の関係代名詞「that」、「"Cuckolds all a row"」の引用符が省かれた形と考えれば理屈が合う。1651年発行のThe English Dancing Master というダンスの本に踊り方が書いてある。「スクエア・ダンスの起源」という英語のサイトにも、踊り方が出ており、現在でも踊られていることがわかる。また、サミュエル・ピープスの日記の1662年12月31日には、チャールズ二世が率先して踊った、という記述もある。この曲はバラッドでもあり、CDにも収録されている。
  CDの歌も聴きました☆

5. ポップスの中のHumpty Dumpty
  大道 友之
  ポップスの中の歌詞、または題名にマザー・グースの唄が使われているものは、手元にあるだけで170曲以上あるが、そのうち70曲以上が「Humpty Dumpty」である。なぜこんなに多いのか。恐らく「危うい」「元に戻らない」「総がかりで取り組む」「ずんぐりむっくり」などイメージが豊かだからではないか。70曲余りの中の使われ方は、題名に唄の一部「All the king's horses」を使用が20曲、「All the king's men」が6曲、「Humpty Dumpty」が2曲、歌詞の一部に引用があるもの47曲。後者は、たいへん見つけにくい。引用のしかたも、そのまま使うだけでなく、一部分だけとか変更して使うなど多様。曲の分野も、ジャズ、カントリー、ロック、ヒップホップ、バラード、ソウルと様々である。
  「You Tube」からダウンロードした数曲を聴きました。
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マザーグース学会20年の歩み
1988.6 「マザーグース研究会」として発足
1988.7 会報No.1発行 (月刊)
1988.11 東海支部結成
1989.9 関東支部結成
1991.12 第1回全国大会開催
1992.12 第2回全国大会開催
1994.1 研究誌『マザーグース研究』No.1発行
1994.8 関西支部結成
1994.12 第3回全国大会開催
1996.3 研究誌『マザーグース研究』No.2発行
1996.12 第4回全国大会開催
1998.1 研究誌『マザーグース研究』No.3発行
1998.6 会発足10周年
1998.12 第5回全国大会開催
1998.3 会報が月刊から隔月発行に。ページは倍増
1999.1 メールの「マザーグース研究会同報通信」実験開始
1999.5 同報通信からメーリングリストへ切り替え
2000.3 研究誌『マザーグース研究』No.4発行
2000.12 第6回全国大会開催
2002.3 研究誌『マザーグース研究』No.5発行
2002.11 第7回全国大会開催
2004.3 研究誌『マザーグース研究』No.6発行
2004.12 第8回全国大会開催
2005.4 会の名称を「マザーグース学会」と変更
2005.12 研究誌『マザーグース研究』No.7発行
2006.12 第9回全国大会開催
2008.3 研究誌『マザーグース研究』No.8発行
2008.11 会報No180発行
2008.12 第10回全国大会開催。会発足20周年記念

               *Tea Time*

           会場より臨む富士山 (photo by フィドル猫)
会場より臨む富士山 バンベリーケーキ
                   イギリスより取り寄せたバンベリーケーキ (photo by ぱぐ)

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講演   日本におけるマザーグースの受容
         ― 初期の英語教育を通した受け入れを中心に ―


  川戸 道昭 先生(中央大学教授。専攻は日欧比較文学)

    日本におけるマザーグースの紹介は、従来『幼稚園唱歌』(明治25年)に掲載された「キラキラ」が本邦初訳とされてきた。しかし、明治初期の大学で使われた英語教科書には、教師用の直訳本(教本)や独習用の「独案内」などが出版され、そこに掲載されたものを含めると、20年もさかのぼり、明治5年の「サージェント・リーダー」の教本『英学捷解』に出ている「一、二、三、四、五」となる。
    日本で最初に使われた英語教科書は、福沢諭吉がアメリカから持ち帰った「ウィルソン・リーダー」。これには「A man of words」「I like little pussy」「Twinkle, little star」の3篇が載っている。これの教本『ウイルソン氏第二リードル直訳』(明治15年)に載っているのが各唄の初訳である。
 
写真左は、『英吉利 幼学初編/First Reader』 (慶応2年) 「サージェント・リーダー」の翻刻本 (川戸先生蔵書) 写真右は、『正則文部省英語読本/Conversational Readers』第3巻 (明治22年) (川戸先生蔵書)

    「チェインバーズ・リーダー」は、東京英語学校、東京大学予備門など官学ので主流校で使われた重要な教科書である。このリーダーの直訳本は発行されなかったが、4篇のマザー・グースの唄が載っており、明治8年には、東京英語学校の一年生と二年生計599人がこのリーダーで学んだと思われる。掲載されていた4篇は「Jenny Wren」「Once I saw a little bird」「I saw a ship a-sailing」「The fox jumped up in a hungry plight」。

    主に大阪英語学校で使われていた「ロイヤル・リーダー」には、初めて「Nursery Rhymes」というコーナーが設置され、日本の読者に「幼児の詩」であるという意識を持たせた。そこに有名な3篇「I love little pussy」「Mary had a little lamb」「There was an old woman who lived in a shoe」が出ており、挿し絵も付いていた。明治19年の「独案内」(江馬主一郎訳)に、口語的な訳が載っていることも画期的な点である。

    明治30年代以降は、英語雑誌が普及の主流になっていく。明治34年発行の『英語世界』臨時増刊号に「鏡の国のアリス」の原文付き注釈が出ており、「ハンプティ・ダンプティ」についても「Humpty Dumptyとは元来卵の別名にて、古くより小児の謎などに此名用ひらる。」とあり、元唄全文の説明が本邦初訳となっている。
    また、明治44年の『英語之友』に、長谷川康という正則英語学校の講師が、6回にわたって「Nursery Rhyme/いぎりすの守歌」という欄を連載。第6回では「Little Bo-peep」を取り上げ、「Bo-peepは原来は『居ない、ない、ばァ』に当り、Boと云ひて顔を隠し、Peepと云ひて顔を出す時の詞なり。それを女児の名にしたるなり。俗謡の常として本篇も格別まとまつた意義あるに非ず。」と、今、読んでも実に的確な理解と紹介である。

川戸道昭先生 関連著作「 明治のマザーグース」(川戸道昭、榊原貴教共編『児童文学翻訳作品総覧』第7巻 【アメリカ編】、大空社・ナダ出版センター共同刊行、2006   pp.9〜47所収)
  ※「ナダ出版センター」(大空社)のホームページで全文が読めます。 ※2016.10/8、2022.9/4リンク更新


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展示   「ネズミの唄」のグッズ&絵本 (photo by フィドル猫)
会員手作りのマザー・グース・キルト 「Hickory Dickory Dock」の置き物 (金属製) 小さな「Hickory Dickory Dock」の置き物 (陶器。カナダ)
会員手作りのマザー・グース・キルト 「Hickory Dickory Dock」の置き物 (金属製) 小さな「Hickory Dickory Dock」の置き物 (陶器。カナダ)

「Hickory Dickory Dock」武井武雄のイラスト (『コドモノクニ』第2巻第5号より)

「Hickory Dickory Dock」他のイラスト入りお茶碗 (ローラ・アシュレイ)

「Hickory Dickory Dock」の小物入れ (陶器)
「Hickory Dickory Dock」武井武雄のイラスト (『コドモノクニ』第2巻第5号より) 「Hickory Dickory Dock」他のイラスト入りお茶碗 (ローラ・アシュレイ) 「Hickory Dickory Dock」の小物入れ (陶器)

トランプ。「5」の札のイラストが「Hickory Dicory Dock」 (アメリカ)

CD「3 Blind Mice」 (アート・ブレイキー)

「Three Blind Mice」の小物入れ (リモージュ焼き)
トランプ。「5」の札のイラストが「Hickory Dickory Dock」 (アメリカ) CD「3 Blind Mice」 (アート・ブレイキー) 「Three Blind Mice」の小物入れ。リモージュ焼き

紙芝居「This is the house that Jack built」のネズミ 他

家の形の厚紙絵本「Hickory Dickory Dock」(アメリカ) 他

Ken Auletta著『Three Blind Mice −How TV networks lost their way−』他
紙芝居「This is the house that Jack built」のネズミ 他 家の形の厚紙絵本「Hickory Dickory Dock」(アメリカ) 他 Ken Auletta著『Three Blind Mice −How TV networks lost their way−』他

クレア・ビートン作「Three Blind Mice」他

堀内誠一画「ねずみが庭に とらえろタウザー」他

ポーラ・レゴ画「Three Blind Mice」他
クレア・ビートン作「Three Blind Mice」他 堀内誠一画「ねずみが庭に とらえろタウザー」他 ポーラ・レゴ画「Three Blind Mice」他

小型のポップアップ絵本 (画家不詳) 他

ベリンダ・ドウンズ刺繍「Hickory Dickory Dock」他

ロバート・サブダ作「Hickory Dickory Dock」他
小型のポップアップ絵本 (画家不詳) 他 ベリンダ・ドウンズ刺繍「Hickory Dickory Dock」他 ロバート・サブダ作「Hickory Dickory Dock」他


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