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マザーグース学会第12回全国大会


2012年12月2日(日)
於:茨木市立生涯学習センター きらめき

目次

研究発表  講演   展示

    ※なお、ここに掲載した研究発表や講演の概要は、あくまでも筆者個人のメモに基づき、 そのごく一部をまとめたもので、学会の公式の記録ではありません。(2012.12/16)
研究発表

1. マザーグース図像のインパクト ―明治から戦前の児童文学に対して―
  高屋 一成
  大正時代の児童向け絵雑誌『赤い鳥』は、創刊号から清水良雄(1891〜1954)を起用し、カラーの美しい表紙絵を掲載した。 同時代の『金の船』『おとぎ世界』『童話』はみな、初山滋(1897〜1973)、岡本帰一(1888〜1930)ら一流の画家を起用し、華やかな表紙絵で 売り上げを競った。これらの挿絵は、それまでの『少年世界』などと明らかに違う。どこからこのような斬新なイメージや構図を着想した のだろうと思っていた。あるとき、白秋が『まざあ・ぐうす』の翻訳に使ったと判明している3冊の原書のうち、マーガレット・タラントの Nursery Rhymes を入手した。『まざあ・ぐうす』の装幀、箱絵は恩地孝四郎と明記されていたが、中のカラーイラストは、タラント の本からの転載であることがわかった。また、『おとぎ世界』には、3冊の原書のうちメイベル・ルーシー・アトウェルのMother Goose Nursery Rhymes からイラストが転載されていた。いろいろ見ていくうちに、清水良雄の馬に乗った少女の絵は、F. ベドフォードの A book of nursery rhymes の「Ride a cock-horse」のイラストがモデルではないかと気がついた。さらに、岡本帰一が描いた花びら のスカートの少女は、タラントの「Ring-a-ring of roses」のイラストの少女を日本化したものだと思うに至った。
  
※たくさんのイラストをスクリーンで見せていただきました。推理の過程がミステリの謎解きのようでした。

2. 英語教材としてのナーサリー・ライム研究
  白井 美希
  アイオナ&ピーター・オーピー夫妻の編集した『ナーサリー・ライム集』(The Oxford Nursery Rhyme Book, 1955)は、 子どもの発達段階に合わせて9つに分類されている。そこでこの『ナーサリー・ライム集』を使って、英語のリズムやメロディー、中学3年 前期程度までの英文法まで学べると考え、4時間分の学習指導案を作成し、小学校6年生の授業で4日にわたって実践した。5月の2日間では、 第5分類「A Little Learning」から「The tragical Death of A, Apple Pie」を、9月の2日間では、第3分類「Little Songs」から「Rain, rain, go away」を取り上げた。5月の授業では、まず英文を見ずに聞き、次にイラストを見ながら聞いて英語の発音を耳に慣らす。単語 の意味、動詞の過去形を学ぶ。教師の後について繰り返す。最終的には、リズミカルに暗唱させる。授業の前後にアンケートをとり、2日目 に暗記テストを行った。9月の授業では、詩の暗記、文法とともに、雨など天候の英語表現も学んだ。実践後、感じたことは、オーピーの 9分類の発達段階をそのまま当てはめるのは難しいということ。新たに「楽しむ唄(リズムやストーリー)」と「学ぶ唄(言葉やことわざ)」 という分類案を考えている。


3. 高校生にマザーグースを! ライムの愉しみ〜英詩創作編
  鳥山 淳子
  高校2年生を対象に、国際理解の授業で、マザーグースの唄を使った英詩作成を指導。「Humpty Dumpty」の唄で、脚韻を 実感。マザーグースの唄は、「Humpty Dumpty」や「キラキラ星」「ロンドン橋」など4拍子のものが多い。 [ここで、参加者みんなで 「Humpty Dumpty」を朗読。発音指導を受け、リエゾンや韻に気をつける。4拍子に合わせると、英語らしいリズムになる。]  また、早口言葉の暗記も実施。中には、「Peter Piper picked a peck of pickled pepper.」を9秒で唱える生徒もいる。生徒にとっては、 これは「英文」ではなく、「リズム、音」として入っているらしい。 [ここで、参加者みんなで、レジュメにある早口言葉を唱える。 "Selfish shellfish"のような短いものから、"I scream, you scream, we all scream for ice cream!"や"A big black bug bit a big black bear."のように長いものまで。] 
  昨年担当した高校3年生のクラスが、文化祭でマザーグースやアリス、赤ずきん、シンデレラなどが登場するオリジナル劇を 上演した動画も映写。ハンプティの衣装は、生徒たちが捨てるというので引き取り、会場に持ってきた。
  
※英語での発表で、参加者には、Homeworkが出ました!

4. WhitmoreのMother Goose's Melodyの復刻版 ―Isaiah Thomasの初版本(1785)ではなく、第2版(1794)―
  安藤 幸江
  アイザイア・トーマス(1749〜1802)は、イギリスで出版されたMother Goose's Melodyを、アメリカで1785年に出版 した。この1785年版原本は、アメリカ・マサチューセッツ州のウスターにあるAmerican Antiquarian Societyに一冊だけある。 1995年10月に訪問して閲覧したが、たいへん損傷が激しく、表紙もなく、下半分は破れていた。「初版本はこの断片だけが知られている。 ウィットモアが復刻したのは第2版(1794)である。」というメモが付いていた。マイクロフィルムから1785年版と1794年版のコピーをとった。
  ウィットモア(1836〜1900)は、1889年にMother Goose's Melodyを復刻出版。復刻版の扉に「1785年のリプリント」と 印刷してあり、ウィットモアによる序文には「Mother Goose's Melodyの二つの再版[1785年版と1794年版]はどちらもタイトルページ がない。」と書いてあるが、実際の1794年版にはタイトルページがある。アイザイア・トーマスの1794年版は、タイトルページに 「The Second Worcester Edition」「MDCCXCIV(=1794)」とあり、見開き左ページには口絵もある。また、1785年版のミスプリを訂正した 箇所もある。「Notes」のページのカットも1785年版は飾り罫だったが、1794年版は点描の文字になっている。ウィットモアの復刻版を、 マイクロフィルムからとった1785年版と1794年版のコピーと比べてみると、ことごとく1794年版の特徴を備えている。したがって、 ウスターのメモが正しく、ウィットモアの扉ページの記述は間違っていることがわかった。
 ウィットモア復刻版の再刊本 (Nabu Press, 2010/1/6)。間違いを拡大再生産している。
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総会
  まず、新しい理事が紹介された。関東支部から4人(うち2人留任)、東海支部から1人(留任)、関西支部から3人(留任)、 支部以外から3人(留任)。また、理事会から提案された、新たに「副会長」と「事務局」を設置するという案を承認した。さらに、 副会長に、関西支部の代表で理事である、安藤幸江氏の推薦も承認された。まず会則変更が必要なので、いずれも仮の承認ということになる。
第二回学会賞
  第二回学会賞は、安藤幸江氏が受賞。1994年に関西支部を結成し、18年にわたりマザーグースの研究を指導し、また、 カルチャーセンターなどの講座で会員以外にもマザーグースの普及につとめ、マザーグースについての論文や著書も出版し、 さらに、研究誌『マザーグース研究』の創刊(1996年)以来、編集委員として各論文にきめ細かく目を通し、レベルの維持につとめるなど、 広くマザーグース研究活動に貢献した功績による。
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講演  子守唄の原像を求めて ―スコットランド・バラ島から京都・竹田まで―
  鵜野 祐介 先生(梅花女子大学教授)
    子守唄の研究をしてみようと思ったのは、大学院のとき『子どもの本の8人―夜明けの 笛吹きたち』(ジョナサン・コット著、晶文社、1988)のオーピー夫妻の章を読んだことがきっかけだった。思い切ってオーピー夫人に手紙を 書いたら、返事が来た! イギリスに来ればアドバイスできるとあり、スコットランドのエディンバラ大に留学し、お会いした。
    エディンバラ大では、ヘブディーズ諸島のバラ島で、「バラ島の歌姫」と言われるモラ・マコーレーさんから 口伝えでケルト語の子守唄「Cadal Cha Dean Mi (カトー・ハ・チャー・ミー)」を教わった。この唄の歌詞は、海で亡くなった恋人を待つ という意味。子守唄は、子どもをあやしたり、眠らせたりする唄だという固定概念を打ち砕かれた。また、この子守唄のメロディーが、 「竹田の子守唄」のメロディーとそっくりなのも不思議だった。
      スコットランドの地図

    シェトランド諸島のブレッセイ島の子守唄「Bressay Lullaby」は、厄除けの唄。英訳すると「Go away little fairies」「Then come bonny angels」という歌詞。これはスコットランドに伝わる「チェンジリング」(妖精の取り替え子)の言い伝えと 関係している。愛しい我が子を連れ去るモノノケである妖精を追い払い、天使に加護を求めている。これは赤ちゃんに向けて歌われている のではなく、そのへんにいるモノノケに対して歌っている。
    スカイ島に伝わる「Uamh an Oir (Cave of Gold)」は、物語を伝承する唄。スカイ島の洞窟へ、怪物に守られた金 を探しに行った探検隊は、バグパイプ吹きも連れて行った。あるとき、井戸の底からバグパイプとともに「私に手が三本あったら、剣で 怪物と戦えたのに」という歌が聞こえてきて、次第に消えていき、探検隊は戻らなかった、という内容。これは、赤ちゃんに歌っていると いうより、その周りにいる兄、姉たちに向けて歌われているものと思う。
    エディンバラなど東海岸に伝わる子守唄「O Can Ye Sew Cushions?」のリフレインでは、 子だくさんの母親が、「人生は暗黒だ。私はあなたたちに何をしてあげられるだろう? あなたたちは多すぎる。あげられるものはない。」 と嘆いている。これも赤ちゃんに向けて歌われているものではない。この子守唄の二番は、オーピー夫妻編著『The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes』の「Hush-a-bye baby」の項に類歌として出ている。
    また、「Beloved Gregor」という子守唄は、海で亡くなった夫の魂に呼びかける歌詞。弔い唄がなぜ何百年も、 子守唄として歌い継がれてきたのか。子守唄は、いわばあの世からこの世へ来たばかりの魂である赤ちゃんに向けて歌う。弔い唄は、 この世からあの世へ旅立った魂に向けて歌う。世を越えた魂に向けて歌うところに共通するものがあるように思う。
    現在、流布している「竹田の子守唄」は、採録者の尾上和彦がメロディーの補作をしている。このメロディーは、 後半に盛り上がりがある。元の「竹田の子守唄」の伝統的メロディーは、一般の日本民謡と同じく前半に盛り上がりがある。実は、尾上和彦 が補作するとき頭にあったのが「ダニーボーイ」のメロディーだったという。「ダニーボーイ」はアイルランド民謡なので、スコット ランドのメロディーと共通点がある。日英の子守唄を調べていくと、意外なところでつながりや共通する概念が見いだせる。

※ところどころで、先生の後について、私たちもケルトの子守唄や日本の子守唄を歌いました♪
ジョナサン・コット著『子どもの本の8人―夜明けの笛吹きたち』原書  

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関西支部より ―チャップブックを作ってみましょう!―

    8ページ仕立てのヨークのチャップブック「The History of Simple Simon」を、折って、切って作りました。
展示
関西支部会員所蔵の絵本 その1 関西支部会員所蔵の絵本 その2 関西支部会員所蔵のグッズ
 
関西支部会員所蔵の絵本 その3 関西支部会員所蔵の絵本 その4 マザーグース学会会報と入会案内
 
関西支部手作りのチャップブック パドルドア、チャップブックなど絵本の歴史 関西支部手作りのBaby's Bouque複製本
 
生徒たちの訳したマザー・グース
  その1  「フェルせんせい」
生徒たちの訳したマザー・グース
  その2  「バラは赤い」
関西支部会員手作りのハンプティ


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