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展示絵本ワンポイント解説


目次

1 『ロンドン橋がおちまする!』
2 The Mother Goose Treasury
3 Ring o' Roses
4 『ハバードおばさんといぬ』
5 『マザー・グースのうた』第3集
6 The Queen of Hears
7 『いたずらこねこ』
8 『ハンプティダンプティの本 イギリス・アメリカのわらべうた』
9 Sing a Song for Sixpence
10 『マザー・グースのうた』第1集
11 『クリスマスは12日つづく』
12 The Baby’s Opera
13 Little Songs of Long Ago
14 『クリスマスの12にち』ボーラム絵
15 『ディア・マザーグース』
16 Tomie de Paola's Mother Goose
17 『マザー・グースのうた』第2集
18 『クリスマスの12にち』ワイルドスミス絵
19 Mother Goose グリーナウェイ絵
20 Hey diddle diddle
21 Beatrix Potter's Nursery Rhyme Book
22 『マザー・グース』ラッカム絵
23 The Little Dog Laughed
24 Our old nursery rhymes
25 The Random House book of Mother Goose


『ロンドン橋がおちまする!』

 本文の、壮大な建物群を乗せた旧ロンドン橋のイラストも見事だが、巻末のロンドン橋の詳しい歴史は、一読に値する。現在の橋は、1970年に完成。1831年に造られた古い橋は、アメリカ・アリゾナ州のレーク・ハバス市に1971年移築されたということだ。
 ピーター・スピア(1927〜, オランダ)には、この他3冊マザー・グース絵本がある。『ホラすてきなお庭でしょう』『バンザイ! 海原めざして出航だ! 』『市場へ! いきましょ! 』いずれも鷲津名都江訳、瑞雲舎、1998刊。

The Mother Goose Treasury

 表紙のハンプティ・ダンプティは、ちょっとはにかんだような穏やかな笑顔。これから派手に落っこちることなどみじんも感じさせない。レイモンド・ブリックズ(1934〜,英)は、この絵本に408篇ものマザー・グースの唄を自ら選び、配置した。1ページに1つの唄の場合、複数の唄の場合、白黒のイラスト、カラーのイラストを使い分けている。「カラー」で「1ページ」という扱いは、その唄が最大限の「強さ、著名度」を持っていると彼が考えた証である。

Ring o' Roses

 カルデコット(コルデコットとも言う)の流れをくむ、レズリー・ブルック(1862〜1940, 英)のイラストは、歌詞にない部分を絵が語っていて楽しい。このハンプティ・ダンプティは、王様の行列に歓迎の旗を振るため、塀に上っている。展示したカラーの見開きの前の2ページには、白黒で元気に旗を振っている姿と、梯子に手をかけて塀を下りようとしている姿が描かれている。展示ページの次ページには、やはり白黒で、落ちて粉々になった彼の回りに王の兵士や王の道化が立っている。一番気の毒そうな表情なのは、馬たちのような感じがしないでもない。

『ハバードおばさんといぬ』

 小学校二年の国語の教科書にも載った「お手紙」("がまくんとかえるくん"シリーズ)の作者、アーノルド・ローベル(1933〜,米)の絵本。犬のとぼけた表情がおかしい。おばさんと犬が挨拶し合う、歌詞が終わった最後のページに、ローベルが付け加えた絵が一人と一匹のいい関係を示唆している。岸田衿子の訳は、押韻のためにとんでもないことをしている犬の行動を語呂合わせはせず、文字通りの意味を調子よく訳している。巻末の「ナーサリー・ライムズのこと」というリーフレットに、この唄の元の作者セアラ・キャスリン・マーティン(1768〜1826)や、「言葉あそび」(breadとdeadなど)について岸田衿子が書いている。原詩も出ているので、押韻はここで確認できる。

『マザー・グースのうた』第3集

 この『マザー・グースのうた』第3集は、タイトルがずばり「だれがこまどり ころしたの」である。堀内誠一(1932〜1987)描く「クック・ロビン」の物語は、どこかブリッグズに似ている。特に、「べにすずめ」と「とんび」がそっくりだ。

The Queen of Hears

 ランドルフ・コルデコット(1846〜1886,英)は、イギリス近代絵本の基礎を築いた「エヴァンズの3人組」の中で、最も躍動感のあるイラストを描いた。この本のハートの女王は、アリスの世界の女王とは違って、なかなか美人の上に家庭的。唄が始まる前の扉絵で、『タルトの作り方』という本を見ている。このように、歌詞にない部分をふくらませるのが、画家の腕の見せ所でもある。

『いたずらこねこ』

 おなじみ 「3匹の子猫が手袋失くして泣き出した」と始まる唄。猫が手袋をしていたらネズミが捕れないと思うのだが、猫の母さんは「見つけるまでおやつはあげません!」と厳しい。
 ポール・ガルドン(1914〜,米)には、他に『ジャックはいえをたてたとさ』『ハバードばあさんといぬ』『トロットおばさんとねこ』(ともに佑学社、絶版)などマザー・グース絵本も多い。

『ハンプティダンプティの本』

 武井武雄(1894〜1983)がマザー・グースの唄に挿絵を付けたのは、訳者のアン・ヘリングが是非にと依頼したからだそうだ。先入観なく描いてもらうため、絵のイメージには一切注文をつけなかったという。『鏡の国のアリス』以前から、卵に手足がはえた“卵人間”に描かれるハンプティ像が定着していたが、武井武雄は太った男に描いた。英米の従来のイメージにとらわれなかったためだろう。赤い服の騎兵は、イギリスの王宮の近衛兵のイメージか。

Sing a Song for Sixpence

 普通、この唄の題名は「Sing a Song of Sixpence (6ペンスの唄)」だが、コルデコットは、「Sing a Song for Sixpence」と付けている。というのも、彼なりにこの唄に理屈付けを試みているためで、冒頭口絵で、椅子にすわった老婦人が、7人の子どもたち(孫たち?)の前でコインをつまんで見せている。この福音館の復刻本に解説を付けた吉田新一によれば、「子どもたちに歌合戦をうながし、一番上手にうたえた子にごほうびだと言う。」という解釈である。なるほど言われてみれば、そう見える。吉田解読はまだまだ続くが、なかなか興味深いので、興味のある方は、『コールデコットの絵本 解説書』をお読みください。

『マザー・グースのうた』第1集

 堀内誠一描く「メリーさんの羊」は、大きな窓のある教室がひとつの学校である。女の先生はロングスカートで、少し昔の感じ。子どもたちはメリーを含めて12人。窓の外には緑がいっぱい。壁の時計は8時ちょっと過ぎ。その下には、かけ算の2の段が貼ってある。

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『クリスマスは12日つづく』

 クリスマスの12日間、毎日恋人がくれた贈り物は、梨の木にとまったヤマウズラ1羽、キジバトが2羽、フランスのメンドリ3羽…。ドゥンツェ(1960〜)は、装飾的な絵を描くフランスのイラストレーター。見開きのページは「9日目の贈り物」である9人のドラマー。ドラムの脇腹にそれまでの贈り物が描き込まれている。

The Baby’s Opera

 イギリスの代表的な初期の絵本作家「エヴァンズの3人組」のひとり、ウォルター・クレイン(1845〜1915)の絵も装飾的。「元旦に私が見た三そうの舟に三人の乙女が載っていた」…と始まる、この唄は、祝祭的な雰囲気を持っている。小舟の上で、着飾った乙女たちが楽器を奏でたり歌ったりしている場面がページいっぱいに描かれている。見開き左ページには楽譜も掲載。

Little Songs of Long Ago

 「奥さん起きて、パイ焼いて」という、この唄は、クリスマス・パイの唄。ルメール(1889〜1966)はオランダの人だが、マザーグース絵本のイラストを数冊描いている。グリナウェイのような繊細さがあり、見開き片ページに縁取りされたイラスト、もう片ページには、当初は縁取りの中に楽譜が載っていたようだが、再刊本なので歌詞のみとなっている。このイラストでは、家の二階で奥さんがベッドで眠っていて、一階には、パイに入れるガチョウがぶら下がっているのが窓ごしに見える。

『クリスマスの12にち』

 エミリー・ボーラムの絵は、たいへん親しみやすい雰囲気。ちょっとクウェンティン・ブレイクと似ている。こちらの「クリスマスの12にち」では、繰り返しの歌詞の贈り物の部分が絵文字になっている。4日目の「colly birds」(辞書にない語。諸訳あり)がクジャクに描かれていたり、5日目の「金の指輪」がサーカスの曲芸の輪だったり、なかなかユニークな点も。この絵本のもう一つの特徴は、訳者である鷲津名都江(小鳩くるみ)さんの歌うCDなのだが、展示できず。CDにはネイティブの人が原詩で歌う部分とカラオケも収録。

Tomie de Paola's Mother Goose

 トミー・デパオラ(1934〜)のちょっととぼけた味わいのイラストで、見開き左にクリスマスの唄三つ、右に新年の唄「舟が三そうやってきた。三人の乙女たちが…」が描かれている。「クリスマスは一年に一回しか来ない。…酒蔵一杯のビール…太ったブタ」「ガチョウは太ってめえりやす。どうぞ1ペニーをこの老いぼれの帽子に」などの唄からは、クリスマスには、ふだん食べないようなごちそうが出るのだということが感じられる。「舟が三そう…」の方は、クレインのイラストとはだいぶ雰囲気が違うが、上空には天使が舞い、幻想的な風景にはなっている。

『ディア・マザーグース』

 日本人のイラストレーター・ひらいたかこ(1954〜)が描く「クリスマスの12にち」。見開き左の歌詞は1番のみだが、巻末に12日目の歌詞あり。見開き右のイラストは、12日目の贈り物である、「12人の跳ねる殿方」。

『クリスマスの12にち』

 ブライアン・ワイルドスミス(1930〜)のイラストは、みんなカラフルなパッチワークだ。表紙のクリスマスツリーには、12日間の贈り物がツリーの飾りになってぶら下がっている。本文では、見開き左に歌詞と白黒の小さいイラスト、見開き右にカラーの1ページいっぱいのイラストが描かれる。歌詞のそばの白黒イラストは、唄が進むにつれて、歌詞の周りを反時計回りに囲んでいく趣向。

『マザー・グースのうた』第2集

 堀内誠一の「三そうのふねのおとめ」たちは、なんとなくクレインの影響を感じる。ギリシャのトーガ風の衣装をまとい、舟の船首には白鳥の首があしらわれているあたり。ただし、他の絵本のイラストをもっと研究してみないと、このイメージがクレインからもたらされているのかどうかは、断言できないが。

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Mother Goose

 「エヴァンズの3人組」の三人目、ケイト・グリナウェイのマザーグース絵本。イギリスでは、「マザーグース」ではなく、「ナーサリー・ライム」と言われることが多いのだが、この本はズバリ「Mother Goose」。ハンプティ・ダンプティは、卵に手足をはやした卵人間に描かれることの多いのだが、塀の上にすわった、寂しそうな男の子に描かれている。

Hey diddle diddle

Beatrix Potter's Nursery Rhyme Book

『マザー・グース』ラッカム絵

The Little Dog Laughed

Our old nursery rhymes

The Random House book of Mother Goose

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