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1 図説マザーグース 藤野紀男著 河出書房新社 2007 マザーグース学会会長の本。 「マザーグース」というコトバの意味から始まり、英米人の本質を 作る要素の一つであり、だからこそ英語・英文学を学ぶときに必要不可欠なのだと説き起こし、日本のわらべ唄 よりも広範囲のジャンルを含み、大人たちも小説や映画や演説で引用するほど子どもだけのものではないことを 示し、様々なイラストや、イギリス王家との関わりも紹介している、盛沢山の内容。 「図説」というだけあってイラストや写真はほとんどカラー。「マザーグースとパブ(1)(2)(3)」「マザーグース と日本(1)(2)(3)(4)」など、コラムも充実。大人向けの入門書として楽しい一冊。巻末には、著者が長年買い集めて きた、マザーグースのキャラクターのぬいぐるみ、絵皿、置物、セーター、クッションなどの写真、イラストの 出典一覧がある。 |
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2 マザーグースイラストレーション事典 夏目康子・藤野紀男編著 柊風舎 2008 70篇のマザーグースの唄のイラストを時代順に並べ、解説した労作。イラストの出典は、古い木版画から 著作権の切れた20世紀初頭までのチャップブックや絵本から採られている。帯によれば、約1050点のイラストが収録 されているとのこと! 「ハンプティ・ダンプティ」には、17種類ものイラストが紹介され、イラストレーターの 解釈や時代による変遷、数画面に分けて描いたものやグロテスクな絵などに解説が付けられている。 巻頭に、口承童謡であるマザーグースの唄にイラストを付けるとは、どういう意味があるかを解説した「マザー グースのイラストレーションとはなにか」、取り上げたイラストの出典以外も含めた、18〜20世紀後半までの 「マザーグース集成本の歴史」、当時の印刷技術の発展を解説した「マザーグースの『絵入り本』―印刷術の200年」 があり、巻末には、取り上げたイラストの出典と主なイラストレーターについての解説、主なイラストレーター 一覧、書名索引、人名索引など、至れり尽くせり。 |
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3 マザーグースのミステリー 藤野紀男著 ミネルヴァ書房 2009 このタイトルだと、マザーグースの唄が中に使われている推理小説の紹介かな? と思ってしまうが、 実は、マザーグースそのものの謎について書かれた本。たとえば、ロンドンの教会づくしの唄「オレンジとレモン」 に出てくる「セント・クレメンツ教会」は、イーストチープにある教会か、ストランドの方を歌ったのか? 「偉大 な老いたるヨーク公」とは、どのヨーク公だったのか? 「ウィー・ウィリー・ウィンキー」のセリフはいつから 「子どもは寝たかい、もう10時だよ」から「8時」に変わったのか? 「メリーさんの羊」は作者だとされている 人物がふたりいるが実は? などなど…。このほか、「ジャック」や「トム」を女の子として描いているイラストの 謎や、太った妻とやせた夫を逆に描いている例や、ネズミを捕まえた「帽子」(水谷まさる訳。「cat」を「hat」と 見間違え?)とか、王様にお出しする「きれいなお皿」(北原白秋訳。「dainty dish」は「すてきなお料理」くらい の意味)とか、歴代の訳者の誤訳も紹介。図版やイラストも豊富で、巻末に出典も明記されている。 |
6 きつねのとうさんごちそうとった ピーター・スピアー絵、松川真弓訳 評論社 1986 Fox Went Out on a Chilly Night: An Old Song (Picture Yearling Book) by Peter Spier, Paw Prints, 2002.11再版 (初版1961) 比べ読みするとたいへん興味深い。キツネが出かける前、巣穴の外で神妙にしているイラストが冒頭に あって、翻訳は「きつねのとうさん さむいばんにでかけた」とだけあるが、原文は「and he prayed to the moon to give him light」と続いていて、月に狩りの加護を祈っている姿だとわかる。「old mother Giggle-Gaggle」も ただの「おばさん」。巻末の楽譜にこの翻訳が付いているので、日本語でも歌えるように思い切って簡略化したようだ。 キツネは服など着ていないが、巣穴の中は暖炉があり、獲ってきたアヒルをフォークとナイフで食べている。 ピーター・スピアーは、他に『ロンドン橋がおちまする!』『市場へ!いきましょ!』 『ホラすてきなお庭でしょう』など「マザーグース・ライブラリー」シリーズの絵本がある。 |
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7 ハエをのみこんだおばあさん シムズ・タバック絵、木坂涼訳 フレーベル館 2002 There was an old lady who swallowed a fly by Simms Taback, Viking, 1997 おばあさんといっても、だいぶ若そうに見えるグレーの髪の太めの女の人がページ中央に描かれ、 めくるとドレスの真ん中に丸い穴があいていて、おなかの中にハエだのクモだの飲み込んだものが見える仕掛け。 見開き右ページには、「どうしてハエを飲み込んだのかは知らない。おばあさん死んじゃうかもしれないね」と いう歌詞の周りで、おばあさんを心配する猫や犬の、唄にはないセリフが吹き出しに描かれている。文字は すべて手描き文字。その猫や犬も飲み込んで、牛も馬も飲み込んだところで、おばあさんは死んでしまう。 元の唄はここで終わりだが、タバックは、最後のページにお墓の絵と「教訓:ウマをのみこむべからず」のセリフを 加えている。このへんはコルデコットの影響かもしれない。 1998年コルデコット賞(アメリカで前年発行された中で最も優れた絵本に与えられる)オナー賞(次点) に選ばれた作品。シムズ・タバックには、他に『これはジャックのたてたいえ』もある。 |
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