HOME MG Book Soccer Propile


ここ2〜3年に買ったマザーグースの本


目次
1 図説マザーグース 6 きつねのとうさんごちそうとった
    The Fox Went Out on a Chilly Night
2 マザーグースイラストレーション事典 7 ハエをのみこんだおばあさん
    There was an old lady who swallowed a fly
3 マザーグースのミステリー 8 Mary Engelbreit's Mother Goose
4 寺山修司研究 9 Debi Gliori's Nursery Rhymes
5 笑いと創造 第五集 10 The Ladybird book of nursery rhymes lift the flaps


1 図説マザーグース
藤野紀男著 河出書房新社 2007

  マザーグース学会会長の本。 「マザーグース」というコトバの意味から始まり、英米人の本質を 作る要素の一つであり、だからこそ英語・英文学を学ぶときに必要不可欠なのだと説き起こし、日本のわらべ唄 よりも広範囲のジャンルを含み、大人たちも小説や映画や演説で引用するほど子どもだけのものではないことを 示し、様々なイラストや、イギリス王家との関わりも紹介している、盛沢山の内容。
 「図説」というだけあってイラストや写真はほとんどカラー。「マザーグースとパブ(1)(2)(3)」「マザーグース と日本(1)(2)(3)(4)」など、コラムも充実。大人向けの入門書として楽しい一冊。巻末には、著者が長年買い集めて きた、マザーグースのキャラクターのぬいぐるみ、絵皿、置物、セーター、クッションなどの写真、イラストの 出典一覧がある。
2 マザーグースイラストレーション事典
夏目康子・藤野紀男編著 柊風舎 2008

  70篇のマザーグースの唄のイラストを時代順に並べ、解説した労作。イラストの出典は、古い木版画から 著作権の切れた20世紀初頭までのチャップブックや絵本から採られている。帯によれば、約1050点のイラストが収録 されているとのこと! 「ハンプティ・ダンプティ」には、17種類ものイラストが紹介され、イラストレーターの 解釈や時代による変遷、数画面に分けて描いたものやグロテスクな絵などに解説が付けられている。
 巻頭に、口承童謡であるマザーグースの唄にイラストを付けるとは、どういう意味があるかを解説した「マザー グースのイラストレーションとはなにか」、取り上げたイラストの出典以外も含めた、18〜20世紀後半までの 「マザーグース集成本の歴史」、当時の印刷技術の発展を解説した「マザーグースの『絵入り本』―印刷術の200年」 があり、巻末には、取り上げたイラストの出典と主なイラストレーターについての解説、主なイラストレーター 一覧、書名索引、人名索引など、至れり尽くせり。
3 マザーグースのミステリー
藤野紀男著 ミネルヴァ書房 2009

  このタイトルだと、マザーグースの唄が中に使われている推理小説の紹介かな? と思ってしまうが、 実は、マザーグースそのものの謎について書かれた本。たとえば、ロンドンの教会づくしの唄「オレンジとレモン」 に出てくる「セント・クレメンツ教会」は、イーストチープにある教会か、ストランドの方を歌ったのか? 「偉大 な老いたるヨーク公」とは、どのヨーク公だったのか? 「ウィー・ウィリー・ウィンキー」のセリフはいつから 「子どもは寝たかい、もう10時だよ」から「8時」に変わったのか? 「メリーさんの羊」は作者だとされている 人物がふたりいるが実は? などなど…。このほか、「ジャック」や「トム」を女の子として描いているイラストの 謎や、太った妻とやせた夫を逆に描いている例や、ネズミを捕まえた「帽子」(水谷まさる訳。「cat」を「hat」と 見間違え?)とか、王様にお出しする「きれいなお皿」(北原白秋訳。「dainty dish」は「すてきなお料理」くらい の意味)とか、歴代の訳者の誤訳も紹介。図版やイラストも豊富で、巻末に出典も明記されている。

目次へ

4 寺山修司研究
国際寺山修司学会編 文化書房博文社 Vol.1:2007、第2号:2008、第3号:2009

  Vol.1に北山長貴著「寺山修司のマザーグース」、第2号に北山長貴著「寺山修司と『マザー・グース』 の翻訳」、第3号に北山長貴著「寺山修司の『マザー・グース』(2)−寺山修司の「創作的意訳」−」を収録。
5 笑いと創造 第五集
ハワード・ヒベット+文学と笑い研究会編 勉誠出版 2008

  鈴木紘治著「マザー・グース笑い唄考(一)」が収録されている。

目次へ

6 きつねのとうさんごちそうとった
ピーター・スピアー絵、松川真弓訳 評論社 1986
Fox Went Out on a Chilly Night: An Old Song (Picture Yearling Book)
by Peter Spier, Paw Prints, 2002.11再版 (初版1961)

  比べ読みするとたいへん興味深い。キツネが出かける前、巣穴の外で神妙にしているイラストが冒頭に あって、翻訳は「きつねのとうさん さむいばんにでかけた」とだけあるが、原文は「and he prayed to the moon to give him light」と続いていて、月に狩りの加護を祈っている姿だとわかる。「old mother Giggle-Gaggle」も ただの「おばさん」。巻末の楽譜にこの翻訳が付いているので、日本語でも歌えるように思い切って簡略化したようだ。 キツネは服など着ていないが、巣穴の中は暖炉があり、獲ってきたアヒルをフォークとナイフで食べている。
  ピーター・スピアーは、他に『ロンドン橋がおちまする!』『市場へ!いきましょ!』 『ホラすてきなお庭でしょう』など「マザーグース・ライブラリー」シリーズの絵本がある。
7 ハエをのみこんだおばあさん
シムズ・タバック絵、木坂涼訳 フレーベル館 2002
There was an old lady who swallowed a fly
by Simms Taback, Viking, 1997

  おばあさんといっても、だいぶ若そうに見えるグレーの髪の太めの女の人がページ中央に描かれ、 めくるとドレスの真ん中に丸い穴があいていて、おなかの中にハエだのクモだの飲み込んだものが見える仕掛け。 見開き右ページには、「どうしてハエを飲み込んだのかは知らない。おばあさん死んじゃうかもしれないね」と いう歌詞の周りで、おばあさんを心配する猫や犬の、唄にはないセリフが吹き出しに描かれている。文字は すべて手描き文字。その猫や犬も飲み込んで、牛も馬も飲み込んだところで、おばあさんは死んでしまう。 元の唄はここで終わりだが、タバックは、最後のページにお墓の絵と「教訓:ウマをのみこむべからず」のセリフを 加えている。このへんはコルデコットの影響かもしれない。
  1998年コルデコット賞(アメリカで前年発行された中で最も優れた絵本に与えられる)オナー賞(次点) に選ばれた作品。シムズ・タバックには、他に『これはジャックのたてたいえ』もある。



目次へ

8 Mary Engelbreit's Mother Goose
Mary Engelbreit絵 Harpercollins Childrens Books 2005

  孫娘のMikaylaのために作った本だと画家が後書きに書いている。児童文学者のレオナルド・マーカス の序文によれば、今日、子どもたちが最初に歌う唄はテレビコマーシャルだという苦言と、マザーグースの唄には 数や曜日を覚える教育的な唄もあるし、なんといっても商業主義ではなく、明確に子どもの側に立っている…と いう。
  マーカスが選んだ150の唄から、画家がイメージの浮かぶものを100篇取り上げた。中には、 あまり知られていない唄もある。四つ葉のクローバーをうたった「One leaf for fame」や「A little pig found a fifty-pound note」「Ickle ockle, blue bockle」「Terrence McDiddler」などなど。
  画家が最初に描いたのは「ミス・マフェット」。クモをフレンドリーに描きたかったというその絵は、 青いシルクハットを持ち上げ、手袋をはめた脚で花束を差し出している。お気に入りは「コウモリ、コウモリ」と 「3匹のお化けばけ」。声に出して読むと楽しいと勧めている。24匹のネズミの船員が乗った船と、月の中の男は 描くのが難しかったという。現代のイギリスを反映して、「Boys and girls」や「月曜日生まれの子ども」など 子どもが大勢出てくる場合は、必ずいろいろな肌の色の子が含まれている。
9 Debi Gliori's Nursery Rhymes
Debi Gliori絵 A Dorling Kindersley Book, 2005

  マザーグース・ツアーのときイギリスで購入。ペーパーバック(CD付き) 。ほぼ全篇、小さい写真付きの ワンポイント解説がある。「ハンプティ・ダンプティ」は、床に座ってヒザを抱えた子どもの写真とゲームとしての 遊び方。「ドクター・フォスター」は、傘をさしてレインコートを着た子どもの写真と「"paddle"の古い形は "piddle"だったので、"middle"と韻を踏んだ。」というコメント。「ミス・マフェット」には、お皿からこぼれた ヨーグルトのような写真と「Curdsはミルクがチーズになる前の状態、Wheyはミルクの水分の部分」という語注。 「コールの王様」は「3世紀の伝説的人物」のコメントとおもちゃっぽい王冠の写真。「トムは笛吹きの息子」は、 生きた子豚の写真と「トムが盗った豚は、生きた豚ではなく木の実のつまった豚のペストリー」。イラストは、キルト 姿でバグパイプを吹く父親のもとへ走っていく男の子が手に小さなこんがり焼けた豚のペストリーを握っている。
  2000年にCDなしで発行されたときのタイトルは、"The Dorling Kindersley Book of Nursery Rhymes"。 CDでは、メロディーのある唄でも朗読しているものも多い。
10 The Ladybird book of nursery rhymes lift the flaps
Annabel Hudson絵 Ladybird Books Ltd., 2004

  マザーグース・ツアーのときイギリスで購入。ペーパーバックの仕掛け絵本。仕掛けといっても、ごく 単純で、塀にすわっているハンプティ・ダンプティのイラストが描かれているフラップを持ち上げると、塀から 落ちかかっているハンプティが描かれている。「めえめえブラックシープ」では、家のドアをあけると、はげた男の人と 羊毛の袋がひとつ描かれている。「6ペンスの唄」では、パイのふたのところを開くと黒ツグミが見えるという具合。
  20篇のうち、普通はマザーグース集に含まれない「Teddy bear」や「Row, row, row your boat」も 収録されている。


目次へ



この部屋についてのご感想、リンクのご連絡などは こちらへお寄せください。

「マザー・グースの部屋」へ