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バラのまわりを回ろうよ
この見出しの唄は、子どもたちの手つなぎ遊びの唄です。イギリスのわらべ唄研究者オーピー夫妻は、ヨーロッパ各国に同じような、 バラを囲む唄や遊びがあり、バラの花輪を飾る「五月祭」を歌った唄だろうと述べているそうです(*1)。
しかし、かつてヨーロッパで何回も大流行したペストのことを歌ったのだという説も根強く残っています。その説では、「バラ」は初期症状の赤い発疹で、 「ポケットいっぱいの花束」は薬草で、「クシャミ」は高熱から来る悪寒を表わし、「みんな倒れる」は、次々と死んでいく様子を歌っている、というものです。 オーピー夫妻は、この「ペスト」説は最近になってから生まれたという立場です。しかし、1981年のアメリカの週刊誌Time には、ペストで犠牲を払った村の追悼式で この唄が歌われたという記事が写真付きで掲載されています(*2)。本当の起源かどうかに関わらず、 この唄が英米の人びとの意識の中でペストと結びついていることは確かです。
もはや真偽のほどはわかりませんが、流行病も遊びの唄となる日が来る…と考えることもできます。新型コロナウイルスで、家から出づらい毎日ですが、 明けない夜はないことを信じて、夜明けの早からんことを祈ります。
最後に紹介するHere We Go Round the Mulberry Bushの本ですが、このタイトルになっている唄(これも輪になって遊ぶ唄ですね)には、‘This the way we wash our hands' という歌詞があります(注・ないヴァージョンもあります)。今こそ、手をしっかり洗って、この時期を乗り越えましょう! (2020.5)
※リンクが切れた画像を差換えました。(2026.5)
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レズリー・L. ブルック
Ring O'Roses, Clarion Books, 初版1922
画家:レズリー・ブルック L. Leslie Brooke(1862〜1940)は、イギリスの絵本作家で、コルデコット、クレイン、グリーナウェイの系譜を継ぐ
子どもの絵本のイラストレーターとして、今日まで親しまれています。マザーグースのイラストとしてはこの絵本以前に、アンドリュー・ラングが編集したThe Nursery Rhyme Book (1897)に描いたものがあります
(この本は、ユーリカ・プレスから「マザーグース初期英米選集セレクション」の1冊として復刻されていて、332篇の唄に109の白黒線画イラストが付けられている)。
本の表紙(※)では、マザーグースの唄の登場人物たちが手をつないでいます。真ん中にハンプティ・ダンプティとボー・ピープ、その左右に小さな鉄砲を持っている小さな男と、買い物カゴをさげた豚、 ガチョウの頭が描かれています。タイトルの文字の下の5弁の赤い花は「ポージー」のようです。前見返しをめくった簡略タイトルページには、白黒で、首に花輪をかけ、前足に花束(posies)を持った豚がにこやかに微笑んでいます。 裏表紙を見ると、赤い花束を持った豚がクシャミしていて、そばで心配そうに見ているボー・ピープと羊が2匹、カラーで描かれています。 この絵本には21篇の唄が収録されています。"Ring a ring o'roses" の唄は本文冒頭にあり、歌詞は第1連4行のみです。「クシャミ」は‘Hush! hush! hush!’、4行目も‘And we all tumble down.’となっていて、 他の絵本とは違うヴァージョンです。 イラストは見開き左ページには、歌詞の下に白黒の線画で、輪になった子どもたちが唄の最後でしりもちをついた場面が描かれています。見開き右ページには、カラーで輪になって回っている場面が描かれています。 子どもたちの遊んでいる庭は、生け垣に囲まれ、芝生が植えられており、花の咲いた木やくつろぐハトたちなども描き込まれています。6人の子どもたちのうち、ひとりだけ大きな女の子がいて、 一番小さな、やっと歩けるくらいの子を見守っている感じがよくわかります。 |
![]() ※画像は、2026.5現在入手可能なペーパーバック(Bella Galbraith社、2025.3)のもの |
![]() ※画像はアマゾン中古品 |
レイモンド・ブリッグズ
Ring-a-Ring O'Roses, Hamish Hamilton, 1962
画家:レイモンド・ブリッグズ Raymond Briggs(1934〜)は、イギリスの絵本作家です。この絵本の他にも、マザーグース絵本を作っています。
1963年には、The White Land : A Picture Book of Traditional Rhymes & Verses、1964年には、Fee fi fo fum : A picture book of Nursery Rhymes、
そして1966年には、ケイト・グリーナウェイ賞受賞のThe Mother Goose Treasury を出版しています。これら4冊のマザーグース絵本のうち、最初のものがこの絵本です。
当初は、「ジャックとジル」の唄だけで1冊の絵本にしようと考えていましたが、量が足りず、他に9篇の唄が追加されました。
タイトルになっている "Ring-a-ring o'roses" は本文にはなく、タイトルページに第1連が、最終ページに第2連が「THE END」という文字とともに掲載されています。 絵本の世界への入り口と、出口に配置されている形です。 イラストは、タイトルページにはカラーで、本のタイトルと歌詞の第1連4行を囲むようにバラの花輪が描かれ、その周りで、ジャックとジルやシンプル・サイモン、ハンプティ・ダンプティ、空飛ぶブタと茶色の服の男、ヤカンを持ったポリーなどが踊っています。同じ絵が表紙にもあります。 目次ページ(タイトルページと見開きになっている)には、同じ面々が目次を囲んで、しりもちをついたり、寝そべったり、しゃがんだりしている場面が白黒で描かれています。 本文最終ページには、第2連の4行と「THE END」の文字を囲むように、白黒で牧草地が描かれ、草に寝そべった牛たちが5頭、配されています。牛たちの首には、花輪がかかっています。 |
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アラン・マークス
Ring-A-Ring O'Roses & A Ding, Dong, Bell: A Book of Nursery Rhymes, Simon & Schuster Children's Publishing, 初版1991
画家:アラン・マークス Alan Marks(1957〜)は、イギリスの絵本作家です。この絵本の他にOver the Hills and Far Away : A book of Nursery Rhymes というマザーグース絵本(60篇収録。1993)も作っています。
この絵本には、75篇の唄が収録されています。本のタイトルになっている "Ring-a-ring o'roses" は、表紙にもカラーイラストで描かれています。手桶を間にしたジャックとジル、コール老王、羊をつれたメアリー、 猫をつれたトロットおばさんなどが、タイトルの文字を囲んで輪になって踊っています。 本文では、"Sally go round the sun" の唄といっしょに見開きで扱われています。左ページには、 カラーで、大きな屋敷のような屋根の上に立つ何本もの煙突を囲んで輪になっている子どもたちが描かれ、右ページには二つの唄の歌詞第1連と、白黒のシルエットで輪になっている子どもたちのイラストがあります。 2篇とも手つなぎ遊び唄としてまとめられています。表紙のカラーイラストも"Ring-a-ring o'roses"なので、本文では白黒シルエットにしたのかもしれません。 なお、姉妹本のOver the Hills and Far Away : A book of Nursery Rhymes には、下記で紹介する"Here We Go Round the Mulberry Bush"の唄が載っています。 第5連まであり、第2連では、「手を洗う」歌詞になっています。 |
![]() ※画像は、North South Booksから1999年に出版されたペーパーバック |
![]() ※画像はアマゾン中古品 |
ジャスティン・トッド
Ring-a-Ring o'Roses : A collection of Nursery Rhymes and Stories, Viking, 1998
画家:ジャスティン・トッド Justin Todd (19??〜)は、イギリスのイラストレーターです。いろいろな分野の本にイラストをつけていますが、子ども向けの作品には、
2冊のアリスの物語、スティーヴンソンの『宝島』、ケネス・グレアムの『楽しい川辺』などがあります。マザーグース絵本としては、「クリスマスの12日」(Gollancz, 1989)を出版しています。
この本には、サブタイトルからもわかるように、マザーグースの唄だけでなく、「赤ずきん」「長靴をはいた猫」「3匹の熊」「ジャックと豆の木」「3匹の子豚」 など8篇の物語も含まれています。「Battle Royal」「Time for Tea」 「Boys and Girls」「Rain and Shine」「Cat and Mouse」など9つのテーマに分けて、91篇の唄を掲載しています。 本の表紙には、タイトルと、輪になって踊る動物たちのイラストを囲んでバラの花輪が描かれています。動物は、真ん中に熊、ガチョウ、羊、豚、犬、ニワトリが輪になり、 足下に3匹のネズミ、頭の上に小鳥と蝶が飛んでいます。 本文では、五月祭で立てるメイポールからのヒモを持って踊っている子どもたちが7人(うち手前の3人はしりもちをついています)、描かれています。 メイポールのてっぺんには、バラの花束がついています。オーピー夫妻の説にならったイラストになっています。 今時の絵本らしく子どもたちは女の子4人、男の子3人、うち3人だけが白人です。少し、アンリ・ルソーに似た、ユーモラスな絵柄です。 歌詞はイラストの上に第1連、下に第2連が印刷されています。「A-Tishoo!」の語だけ、文字がだんだん大きな字になって、クシャミの感じを表しています。 また、この本には、下記で紹介する"Here We Go Round the Mulberry Bush"の唄も載っています。こちらも第2連では「手を洗う」歌詞になっています。 |
*1 鳥山淳子著『もっと知りたいマザーグース』(スクリーンプレイ、2002年)、p.151。 著者がオーピー夫妻の本The Singing Game (1985) から引用している内容の孫引きです。
*2 藤野紀男著『マザー・グースの英国』(イブニングニュース社、1985年)、p.64。Time 1981年9月14日号。 「Commemorating a Heroic Act」という見出しの記事と、"Ring-a-ring o'roses"の唄を唱える助祭の写真、「17世紀のペスト禍の際、 葬儀抜きで埋葬される犠牲者たち」という説明付きで、大八車のようなものから死者を下ろしている場面を描いた版画が掲載されています。