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この見出しの唄は、子どもたちの手つなぎ遊びの唄です。イギリスのわらべ唄研究者オーピー夫妻は、ヨーロッパ各国に同じような、 バラを囲む唄や遊びがあり、バラの花輪を飾る「五月祭」を歌った唄だろうと述べているそうです(*1)。
しかし、かつてヨーロッパで何回も大流行したペストのことを歌ったのだという説も根強く残っています。その説では、「バラ」は初期症状の赤い発疹で、 「ポケットいっぱいの花束」は薬草で、「クシャミ」は高熱から来る悪寒を表し、「みんな倒れる」は、次々と死んでいく様子を歌っている、というものです。 オーピー夫妻は、この「ペスト」説は最近になってから生まれたという立場です。しかし、1981年のアメリカの週刊誌Time には、ペストで犠牲を払った村の追悼式で この唄が歌われたという記事が写真付きで掲載されています(*2)。本当の起源かどうかに関わらず、 この唄が英米の人びとの意識の中でペストと結びついていることは確かです。
もはや真偽のほどはわかりませんが、流行病も遊びの唄となる日が来る…と考えることもできます。新型コロナウイルスで、家から出づらい毎日ですが、 明けない夜はないことを信じて、夜明けの早からんことを祈ります。
最後に紹介するHere We Go Round the Mulberry Bushの本ですが、このタイトルになっている唄(これも輪になって遊ぶ唄ですね)には、‘This the way we wash our hands' という歌詞があります(注・ないヴァージョンもあります)。今こそ、手をしっかり洗って、この時期を乗り越えましょう! (2020.5)
*1 鳥山淳子著『もっと知りたいマザーグース』(スクリーンプレイ、2002年)、p.151。 著者がオーピー夫妻の本The Singing Game (1985) から引用している内容の孫引きです。
*2 藤野紀男著『マザー・グースの英国』(イブニングニュース社、1985年)、p.64。Time 1981年9月14日号。 「Commemorating a Heroic Act」という見出しの記事と、"Ring-a-ring o'roses"の唄を唱える助祭の写真、「17世紀のペスト禍の際、 葬儀抜きで埋葬される犠牲者たち」という説明付きで、大八車のようなものから死者を下ろしている場面を描いた版画が掲載されています。
Here We Go Round the Mulberry Bush |
Here we go round the mulberry bush,
Mulberry Bush, mulberry Bush. Here we go round the mulberry bush On a cold and frosty morning. This the way we wash our hands, Wash our hands, wash our hands. This the way we wash our hands On a cold and frosty morning. |