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クリスマスのマザーグース絵本『クリスマスの12日』
The Twelve days of Christmas


目次

1 愛蔵版 クリスマスの12日    2 クリスマスの12にち
3 クリスマスは12日つづく 恋人たちのマザーグース    4 クリスマスの12日
5 クリスマスの12にち    6 The Twelve Days of Christmas (Little Golden Books)
    日本では、「クリスマス」は、12月25日の一日だけを指しますが、欧米では「クリスマス休暇」「アドヴェント(待降節)週間」など、 もっと長い期間の行事です。「クリスマスの12日」とは、クリスマス当日(12月25日)から公現祭(1月5日)までの十二日間を指し、 毎日贈り物をする昔の習慣を歌ったマザーグースの歌でもあります。
   ここでは、このマザーグースを絵本にしたもので、翻訳もあるものを主に紹介します。 4日目の贈り物に出てくる謎の鳥について、どのように描かれているか、それを訳者がどう訳したかも合わせて紹介します。



愛蔵版 クリスマスの12日  ロバート・サブダ作, きたむらまさお訳
大日本絵画、2007.1、ISBN:978-4-499-28181-2
   サブダの飛び出す絵本。仕掛けやデザインは大人向けの凝った感じ。この翻訳の「愛蔵版」は、原書よりさらに凝っている。 表紙の鳩がくわえる赤いリボンは、原書では印刷だが「愛蔵版」ではビロードのような深紅の布。7日目と11日目にも赤いビロードが使われている。 さらに、最後に今までの贈り物が全て飾られているクリスマスツリーの場面が追加されている。このツリーのところどころで、小さなランプが赤や黄色に光るという趣向(裏表紙から電池交換できる)
   4日目の贈り物は、原書では「four calling birds」。きたむらまさおの訳では「さえずる鳥が4羽」。
   ロバート・サブダには、この他に『The Movable Mother Goose』(LITTLE SIMON MERCHANDISE, 1999)という作品もある。


クリスマスの12にち  エミリー・ボーラム絵、わしづなつえ訳
福音館書店、1999、ISBN:4-8340-1562-9
   ボーラムの絵は、少しクウェンティン・ブレイクと似ていて親しみやすい。付録のミニCDでは、訳者が小鳩くるみ名で日本語訳を、ネイティブの人が英語で歌っている。
   4日目の贈り物「four colly birds」(辞書にない語。諸訳あり)は、「クジャク」と訳されているが、絵ではどう見てもクジャクに見えない、カラフルな架空の鳥たちが描かれている。


クリスマスは12日つづく 恋人たちのマザーグース  ドロテー・ドゥンツェ絵、岸田今日子訳
太平社、1992、ISBN:4-924330-23-X
   フランスの女流画家ドゥンツェの絵は、とても装飾的。7日目まで出てくる鳥たちは、リアルに描かれているのに上着を着ていたり帽子をかぶったりしている。
   巻末に原詩と吉田新一日本女子大学教授の解説、画家と訳者の写真付き紹介が掲載されている。
   4日目の贈り物「four calling birds」は、「おしゃべり鳥」と訳され、絵では、クジャクや白鳥、七面鳥などが鳴いている場面が描かれている。


クリスマスの12日  ルイーズ・ブリーアリイ絵
ジーシープレス、1988、ISBN:4-915619-20-6
   本文は英語のままなので、訳者はいない。ただし裏表紙に、この歌が18世紀以前に「だんだん言葉を増やしていく遊びの歌として、フランスからイギリスに伝えられた」という説明の後に、 第12連の訳が印刷されている。
   ブリーアリイのイラストは幻想的な雰囲気で、奇妙に細長い恋人たちが各場面に描かれている。
   4日目の贈り物「four calling birds」の絵は、動物園にあるような大きな円筒形のケージ内に黒っぽい鳥が4羽小さく描かれている。 裏表紙の訳では「かっこう4羽」だが、全くかっこうには見えない。


クリスマスの12にち まちがえないでいえるかな?  ブライアン・ワイルドスミス絵 石坂浩二訳
講談社、1997.10、ISBN : 978-4-06-261974-5
   1992年にエム・エ・エム製作、らくだ出版から発売された本の改訂版。現在購入できる原書絵本とは表紙の絵が異なる(※画像左は英語版)。 見開き右ページにその日の贈り物がカラーで大きく描かれ、左ページには、歌詞とそれまでの贈り物が小さく描かれている。
   4日目の贈り物「four colly birds」には、鳥かごに入った4羽の長い尾羽の鳥が描かれている。そこで訳も「4わのことり おがながい」。


The Twelve Days of Christmas, ill. by Sheilah Beckett
Golden Books、2015.9、ISBN : 978-0-307-00149-8
   リトル・ゴールデン・ブックスの1冊。小型のハードカバー絵本。2019.12現在、翻訳はなし。王子様がお姫様に求婚の贈り物として、毎日捧げているように見える。
   4日目の贈り物は「four calling birds」。イラストでは、ツバメのように分かれた尾で、水色のさえずる小鳥として描かれている。

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The twelfth day of Chritsmas,
My true love sent to me
Twelve lords a-leaping,
Eleven ladies dancing,
Ten pipers piping,
Nine drummers drumming,
Eight maids a-milking,
Seven swans a-swimming,
Six geese a-laying,
Five golden rings,
Four colly birds,
Three French hens,
Two turtle doves, and
A partridge in a pear tree.

   4日目の贈り物・謎の鳥「colly birds」

  この鳥については、オーピーのThe Oxford Dictionary of Nursery Rhymesにも、「Four colly birds」の形で掲載されています。しかし、それぞれの贈り物についての解説はありません。 スコットランドのヴァージョンやフランス各地に残るこの歌の類歌に歌われている贈り物が延々と紹介されているだけです。そしてこれらは、1年の各月の食べ物または娯楽を意味している、と言うのです。
  ある論文(*)によれば、この「colly」という単語は、ライトの『英語方言辞典』の「coll(e)y」の項に、グロスター、サマセット、 デヴォン地方の方言として「The blackbird」とあり、用例としてこの唄が引用されているそうです。 「colly」の形容詞としての意味「Black, dirty, sooty」から派生した用法のようです。どうやらこれが正解ではないかと感じています。

*鈴木紘治「マザー・グースにおける鳥」(『成蹊大学経済学部論集』29巻1号、1998.10)。この論文は次の単行本にも収録されています。 鈴木紘治著『マザー・グースの謎を解く −伝承童謡の詩学−』(コールサック社、2012.2、ISBN978-4-86435-061-7)pp.200-204「第4章 マザー・グースにおける鳥 IV 各種のライムと鳥 3. 積み上げ唄における鳥」



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