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マザーグース学会の全国大会が開かれました。当日のようすを簡単にご紹介します。
※なお、ここに掲載した研究発表や講演の概要は、あくまでも筆者個人のメモに基づき、その一部をまとめたもので、学会の公式の記録ではありません。(2015.1)
<講演> テーマ「マザーグースと共に45年 ―回顧と期待―」 講師 藤野 紀男(マザーグース学会会長) (十文字学園女子大学・名誉教授、立正大学・非常勤講師)
1. マザーグースとの出会い
経済学部を卒業して会社勤めを21年したが、口語英語を研究しようと思い、教職に転じた。用例を求めて映画を見たが、 3本も見ると頭痛がするので、ミステリに切り替えた。クリスティの処女作『スタイルズ荘の怪事件』を原書で読んでいたら、 わからない比喩が出てきた。 “... which sounds like the house that Jack built!”翻訳を5冊買って読んだが、やっぱりわからない。 「何だか玩具の家みたいに聞こえるだろう」(S文庫=創元推理文庫 *1)*1 フィドル猫註・藤野紀男著『知っておきたいマザー・グース Part1』(三友社出版、1983) p.107より補記 ※画像左は、The Mysterious Affair at Styles, Harper, 2001 (paperback)のアマゾンジャパンリンク。 画像中は、2004年創元推理文庫(田中西二郎訳)の楽天ブックスリンク(参考)。 画像右は、1982年ハヤカワミステリ文庫(田村隆一訳)のアマゾンジャパンリンク。 その出所がマザーグースだとわかったのは、旅先で暇つぶしに買った本『マザー・グースの唄 イギリスの伝承童謡』(平野敬一著、 中公新書、1972)を読んだとき。以来、はまり込んで今に至る。 ※画像は、アマゾンジャパンリンク 2. Mother GooseとNursery Rhymes 「Mother Goose」という用語が初めて本のタイトルに現われたのは、調べた範囲では1780年のMother Goose' Melody; or, Sonnets for the Cradle である。一方、「Nursery Rhymes」は、1824年のOn Nursery Rhymes in General である。それまでは、 「Songs for the nursery」とか「Rhymes for children」などと呼んでいた。イギリスでは、1820年代以降、「Nursery Rhymes」の頻度が 高くなり、ハリウェルのThe Nursery Rhymes of England , 1842で定着した。アメリカでは、「Mother Goose」が定着していく。 用語の示す範囲は、1700年代には、ほぼ同じ意味で使われていたが、新作の童謡を含めた童謡集が「Nursery Rhymes」のタイトルで 出版され始めて、完全な同義語ではなくなり、現在では、「Mother Goose」<「Nursery Rhymes」という関係。「Mother Goose」は、 「Old (or Traditional) Nursery Rhymes」と言える。従って、グリナウェイ(1881)やラッカム(1913)の本のタイトルにもそれが現われている。 ※画像左は、グリナウェイのMother Goose 再刊本のアマゾンジャパンリンク。タイトルページには、 Mother Goose, or The Old Nursery Rhymes とある。画像右は、ラッカムのMother Goose:The Old Nursery Rhymes 再刊本の アマゾンジャパンリンク。 3. マザーグースの特徴 (1)特徴ある主人公が数多く登場。(2)様々なシチュエーションが表現されているので、詩句が引用されたり比喩に用いられたり する。(3)王室のような上流階級から下層階級まで広く浸透している。(4)英語を習得する際の重要性。例えば、同時通訳のとき、原稿にない 引用が突然入ってきて、知らないとたいへん困る。また、日本人と結婚したイギリスの男性が自分の子どもの英語習得のために マザーグースのCDを用意していた。 4. マザーグースの説明、定義、訳 ロングマンの辞書には、以下のように説明されている。 The imaginary writer of a book of Nursery Rhymes (=old songs or poems for young children), or the nursery rhymes themselves. (Longman Dictionary of English Language and Culture , 1998)定義としては(1)イギリスの伝承童謡 では狭すぎるし、(2)英語圏の伝承童謡 だと広すぎる。(3)アメリカやイギリスなどの古い 伝承童謡 あたりが近いか。訳語としては、(1)わらべ唄 や(2)伝承童謡 よりも(3)マザーグース が適している。というのも、日本の伝承童謡 との最大の違いが、大人と子どもの共有性にあるからである。 5. マザーグースの多様性→研究の多岐 歴史的な詩句の変遷、地域的な詩句の違い、メロディーの違い、古い文法や語法の使用、歴史的な背景、イラスト、集成など 様々な面に着目して、語学、詩学、書誌学、比較文化、翻訳論、イラスト史、音楽など多面的なアプローチができる。 今までにまとめてきた文献資料の収集、整理、発表についてと、今後の研究への期待を列記する。 (1)マザーグース集成の収集 (例1)『マザーグース初期英米選集コレクション』『マザーグース初期研究書集成』 『マザーグース20世紀初頭英米選集コレクション』*2 (2)(1)を整理して比較 (例1)Mother Goose's Melody インデックス ―付・調査資料一覧 (フィドル猫作成) (3)発表 (例1)Mother Goose's Melody 所収の唄に関する一考察 *3 (例2)The Nursery Rhymes of England ―その初版本に関する一考察 *4 (4)マザーグース関連論考、投稿、記事等の収集 以前は用例のため10誌購読していた。今はイギリスの雑誌4誌のみ。女性誌の記事などはチェックしきれない。 今後の研究が待たれる。現在テレビの衛星放送で、バーナビー警部やポアロのドラマを見ながら、口語のマザーグース用例をチェック している。 (5)誤れる諸説の訂正 (例1)Mother Goose's Melody の出版年に関する一考察 *5 (例2)Tommy Thumb's Pretty Song Book, Vol.2 の出版年に関する一考察 *6 (例3)Mother Goose's Melodies, The only Pure Edition とThe Only True Mother Goose's Melodies の比較 *7 (6)マザーグースに見る文化的背景の投影 (例1)Wife-sellingに見るマザーグースの民俗学的価値 *8 (例2)伝説とマザーグースを結ぶ“The Man in the Moon” *9 (7)翻訳史 (例1)日本におけるマザーグースの受容 ―初期の英語教育を通した受け入れを中心に― (川戸道明氏 マザーグース学会第10回大会講演) (例2)マザーグースの翻訳小史 *10 (例3)『マザーグース初期邦訳本復刻集成』 *11 (8)イラスト史 (例1)『マザーグースイラストレーション事典』 *12 (9)体験 (例1)マザーグース・ツアーの企画・実施 *13 *2 フィドル猫註・ユーリカ・プレス、2004、2005、2008 *3 フィドル猫註・『十文字学園女子短期大学研究紀要』25号(1994), pp.71〜81 *4 フィドル猫註・『TINKER BELL 英語圏児童文学研究』30号(1984), pp.42〜45 *5 フィドル猫註・『常葉学園富士短期大学研究紀要』2号(1992), pp.287〜302 *6 フィドル猫註・『社会情報論叢』6号(2002), pp.37〜51 ※リンクは、国立国会図書館雑誌記事索引詳細ページ *7 フィドル猫註・「Mother Goose's Melodiesに関する一考察」『TINKER BELL 英語圏児童文学研究』42号(1996)pp.54〜69 *8 フィドル猫註・ 「マザーグースと‘Wife-selling’」『TINKER BELL 英語圏児童文学研究』31号(1985), pp.1〜6 *9 フィドル猫註・出典不明 *10 フィドル猫註・『図説翻訳文学総合事典』(大空社、2009)第5巻「日本における翻訳文学」pp.119〜131 *11 フィドル猫註・高屋一成編集・解説、エディション・シナプス、2011 *12 フィドル猫註・夏目康子・藤野紀男編著、柊風舎、2008 ※画像は、楽天ブックスリンク *13 フィドル猫註・2009年8月、マザーグース学会20周年記念事業「マザーグースの舞台を訪ねて」 として実施 補足 The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes の功罪 オーピー夫妻のThe Oxford Dictionary of Nursery Rhymes は労作だが、オーピー夫妻は研究者としては素人だった。 その功罪のひとつが、Mother Goose's Melody の出版年を「c.1765」と掲載(*14)したことで、以降の本では全て「c.1765」となって しまった点があげられる。 (*14 フィドル猫註・出版登記や出版広告からは、1780年出版とするのが妥当。上記註*5参照) もう一点、「dictionary」というタイトルなのに、「怖い唄」や「下品な唄」が入っていない。入れて批判するならよいが、 初めから切り捨てるのはおかしい。さらに、掲載唄の出典が示されていないことも、研究書としての基本が押さえられていない。 研究においては、資料は必ず現物を確認しなければならない。また、用例は出典を示さなくてはならない。 ※画像は、2nd editionのアマゾンジャパンリンク |
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<展示>
今回は、2014年が午年なのにちなんで、「馬」が出てくるマザーグースの唄をテーマにした 「“馬”のマザーグース」絵本・グッズおよび、手作りのマザーグース・グッズを展示しています。 |
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マザーグース絵本 ※「展示絵本リスト イラスト比較」は こちら ☆当日、展示しなかった、おまけもあります! | ||
「“馬”のマザーグース」絵本 その1 木馬に乗ってバンベリクロスへ |
「“馬”のマザーグース」絵本 その2 ヤンキー・ドゥードゥル |
「“馬”のマザーグース」絵本 その3 私のポニーはダプル・グレイ |
目次へ | ||
「“馬”のマザーグース」絵本 その4 小さなだんなさま |
「“馬”のマザーグース」絵本 その5 もしも望むだけで馬が |
「“馬”のマザーグース」絵本 その6 農夫が馬で市場へ |
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マザーグース・グッズ | ||
「“馬”のマザーグース」グッズ | 手作りのマザーグース・グッズ | 手作りのマザーグース・グッズ 大型キルト 部分その1 |
手作りのマザーグース・グッズ 大型キルト 部分その2 |
手作りのマザーグース・グッズ 大型キルト 部分その3 |
手作りのマザーグース・グッズ 大型キルト 部分その4 |