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うし年のマザー・グース


One old Oxford ox opening oysters.
Two toads totally tired trying to trot Tisbury.
Three thick thumping tigers taking toast for tea.
Four finicky fishermen fishing for finny fish.
Five frippery Frenchmen foolishly fishing for frogs.
Six sportsmen shooting snipes.
Seven Severn salmon swallowing shrimps.
Eight eminent Englishmen eagarly examing Europe.
Nine nimble noblemen nibbling nectarines.
Ten tinkering tinkers tinkering ten tin tinder-boxes.
Eleven elephants elegantly equipped.
Twelve typographical topographers typically translating types.


おいでなすった1頭の オックスフォードの 老いた雄牛 おいしそうな牡蠣を お召し
ひるがえって ひどく疲弊した ひき蛙2匹 ひたすらにティスベリーめざし ひた走る
とてつもなく太った 虎が3頭 トーストをお茶と ともにとる
理屈がすきな 漁師が4人 理詰めで魚の 漁に行く
ふてぶてしい5人の フランス人 不謹慎にも ふつうの蛙 ふりまわす
腕自慢の 運動家6人 腕試しにシギを 撃ってみる
札幌の 鮭7匹 さっぱりとエビを さばいていく
いい感じの8人の イギリス人 一心に 異国を調査
機知に富んだ9人の 貴族 きっちりと キンカンかじる
10人の 熟練いかけ屋 充分な技を 十個の火口箱で 実証
ゆうゆうと11頭の 優雅な象たち 悠然と装う 
緻密な12人の 地形学者 忠実に 直訳する
訳・フィドル猫

  この唄には、『いっとうのいぎりすのおうし』 (冨山房、1984) という
谷川俊太郎の名訳があります。
  とてもかないませんが、なんとか意味を生かして、かつ頭韻を踏もうと奮闘しました。
討ち死にしている点も多々あると思いますが、
少しでも笑っていただければ欣快の至りです。



ひょっこり、ひょっこり、ひょっこりしょ。
猫が胡弓弾いた。
牝牛がお月様飛び越えた。
小犬がそれ見て笑ひ出す。
お皿がお匙を追つかけた。
ひょっこり、ひょっこり、ひょっこりしょ。

訳・北原白秋
Hey, diddle, diddle,
The cat and the fiddle,
The cow jumped over the moon,
The little dog laughed
To see such sport,
And the dish ran away with the spoon.
  やっぱり、「牛」のマザー・グースといったら、これでしょう。でも、さすが 狩猟・牧畜文化圏、日本語とは段違いに「牛」を意味する単語が多い。「cow」は「牝牛」、 「bull」は「牡牛」、「ox」は「去勢牛」、「calf」は「仔牛」…。
  白秋の訳は、角川文庫ではなく、『白秋全集』第25巻 (岩波書店、1987) より 採りました。竹友藻風の訳は、「ねずみ年のマザー・グース」 と同じく『諸国童謡集』 (『世界童話大系 第17巻 世界童謡集 上』世界童話 大系刊行会、1925) から採っています。
There was a piper had a cow,
And he had naught to give her,
He pull'd his pipes and play'd her a tune,
And bade the cow consider.

The cow considered very well,
And gave the piper a penny,
And bade him play the other tune,
"Corn rigs are bonny."
笛吹きが牝牛を 飼っていた
なんにもやるものが なかったので、
バクパイプで一曲 献呈した
牝牛の判断に ゆだねたのさ

牝牛は よくよく考えて
笛吹きに1ペニー わたしてね
別の一曲 所望したのさ
「おいしい麦は すばらしい」

                       訳・フィドル猫
陽気に上って 陽気に下る
鐘が鳴る鳴る ロンドンの街

雄牛の目玉は 的の中心
鐘が鳴る鳴る 聖マーガレット教会

訳・フィドル猫

Gay go up and gay go down,
To ring the bells of London town.

Bull's eyes and targets,
Say the bells of St. Marg'ret's.
  有名なロンドンの鐘づくしの唄の冒頭。様々なヴァリエーションがあり、ここでは、 Gammer Gurton's Garland, (1810) から採りました。この後、第5連に、短かいバージョンでは よく冒頭に来る「Oranges and lemons」で始まる詩句が出てきます。

Cushy cow bonny
Let down thy milk,
And I will give thee a gown of silk;
A gown of silk and a silver tee,
If thou wilt let down thy milk to me.
かわいい 牝牛
ミルクを 出して
シルクの ガウンを あげるから
シルクの ガウンと 銀の端綱
ミルクを 出したら あげるから

                       訳・フィドル猫

鐘をつくのは誰にしよう。
わし、と牡牛が申し候。
ひつぱることが出來る故、
鐘ならわしがつきませう。

訳・竹友藻風
Who'll toll the bell?
I, said the Bull,
Because I can pull,
I'll toll the bell.
  ご存知「コック・ロビン」の唄の一部。平野敬一氏の解説によると、「Bull」は 鳥の「bullfinch (ウソ)」と解する説もあるとのこと(『マザー・グース』4 講談社文庫)。 わたしは、この説がお気に入りだったのですが、今回は「牛」にしました。
  竹友藻風の訳は、「駒鳥 (ロビン)」という題が付いており、この牡牛の後に、 「案内役」に「燕」が申し出て、さらに「空の小鳥たちは誰もみな」が続き、その後にもう1連、 「縁(ゆかり)のかたの一同へ/お傳へ申す、このしらせ、/次の小鳥の 裁判に/雀は罪をさばかれる。」という詩句があって結ばれています。

There was an old man,
And he had a calf,
And that's half;
He took him out of stall,
And put him on the wall,
Ahd that's all.
むかし老人があつて
小牛 (カアフ) をもつてゐた。
それで半分 (ハアフ) だ。
牛小屋から出して
(ウオル) にしばりつけた。
それですつかり (オオル) だ。

訳・竹友藻風


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