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うま年のマザー・グース


Ride a cock-horse to Banbury Cross,
To see a white lady ride on a white horse !
Rings on her fingers and bells on her toes,
And so she makes music wherever she goes.


木馬、はいどう、バンベリ、クロッスへ、
行つて見ようや、はい、どうどう、
白い貴婦人(レーディ)、白い
指に指輪(リング)よ 靴には鈴よ、
何處へ行くにも ちんからり。
訳・竹友藻風

  この唄の原詩では、白馬に乗っているのはたいてい「a fine lady」なのですが、「a white lady」です。
竹友藻風が使ったと思われる原書のうち、Ernest Rhysが編集した
Mother Goose's Nursery Rhymes and Songs (Everyman's Library),
London: J. M. Dent & Sons, 1928 (reprint of 1st ed. published in 1910)
(『マザーグース20世紀初頭英米選集コレクション』〈マザーグース・ライブラリー 3〉、藤野紀男・夏目康子解説、
ユーリカ・プレス発行、2008 に、復刻が収録されています。)

に掲載されている唄がこの形でした。




お沓(くつ)を穿(は)かしよ、仔馬に穿かしよ。
牝馬に穿かしよ。
袋を背(せな)に乗しよ。
背負(しょ)つたか、見よよ。
背負つたら、麦よ。
背負はなきや、脳味噌ぶつつウぶしよ。

訳・北原白秋
Shoe the colt , shoe!
  Shoe the wild mare ;
Put a sack on her back,
  See if she'll bare.
If she'll bear,
  We'll give her some grain;
If she won't bear,
  We'll dash out her brains!
  「牛」と同じく、英語には「馬」にあたる言葉がたくさんあります。この唄に出てくる「colt」と「mare」も そうですし、「pony」もいくつか出てきます。
  白秋の訳は、角川文庫ではなく、『白秋全集』第25巻 (岩波書店、1987) より採りました。 竹友藻風の訳は、「ねずみ年のマザー・グース」と同じく『諸国童謡集』 (『世界童話大系 第17巻 世界童謡集 上』世界童話大系刊行会、1925) から採っています。

釘がないので、蹄鐵(かなぐつ)が無くなつた、
蹄鐵がないので、が無くなつた、
がないので、乗手(のりて)が無くなつた、
乗手がないので、國が無くなつた。
蹄鐵の釘ひとつのために。

訳・竹友藻風
For want of a nail the shoe was lost,
For want of a shoe the horse was lost,
For want of a horse the rider was lost,
For want of a rider the battle was lost,
For want of a battle the kingdom was lost,
And all for the want of a horseshoe nail.
  この唄の藻風訳は、「戦がなくなる」一行が訳出されていません。そういう原詩があったのか、印刷漏れか訳し忘れか わかりません。
  このふたつの唄で、「shoe」という単語が、人間の「靴」だけなく、馬の「蹄鉄」を指したり、動詞では「蹄鉄を打つ」 意味があることがよくわかります。
If wishes were horses
Beggars would ride;
If turnips were watches
I would wear one by my side.

願うだけで飼えるなら
こじきもに乗れるでしょう
もしもカブが時計になるなら
わたしも腰に下げるでしょう

                       訳・フィドル猫
一で支度だ、
二で用意、
乗手よくやれ、
牝馬が走る。

訳・竹友藻風
One to make ready,
And two to prepare;
Good luck to the rider,
And away goes the mare.
I had a little pony,
His name was Dapple Gray;
I lent him to a lady
To ride a mile away.

She whipped him, she slashed him,
She rode him through the mire;
I would not lend my pony now,
For all the lady's hire.
かわいい小馬を もっていた
彼の名前は ダプル・グレイ
1マイルばかり 乗るという
貴婦人に 貸してあげたけど

貴婦人、彼を むち打った
沼地にまで 乗り入れた
これから小馬は 貸さないぞ
貴婦人用の 乗馬には

                       訳・フィドル猫

  最初の唄で思い出すのは、アン・マキャフリー作の『もしも願いがかなうなら』(創元推理文庫、2006)。ヨーロッパ中世の 田舎の領主の館が舞台で、領主の娘ティルザが主人公。兄の16歳の誕生日に、本来なら馬が贈られるはずなのに、戦が起こって、父は出陣、 領地に馬は1頭もいない。そこでティルザは兄のために、「どうか馬が手に入りますように」と願う、というお話。
  二つ目の唄には、竹友藻風が「競馬」という題を付けています。
  三つ目の唄に出てくる「ポニー」は、他に「ヤンキー・ドゥードル」の唄にも出てきます。ロビンとリチャードの小馬 Jack Nagもポニーでしょう。

ハンプティ・ダンプティ 城壁にのっかった
ハンプティ・ダンプティ ど派手におっこった
王様の騎兵 全部でも
王様の歩兵 全部でも
ハンプティ 元にもどせない

訳・フィドル猫
Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses,
And all the king's men,
Couldn't put Humpty together again.
  この有名な唄に出てくる「horses」は馬そのものではなく、「騎兵」を指します。(※渡辺茂著『マザー・グース童謡集』 北星堂書店、1978のp.14参照。)英和辞典にも、ちゃんと出ています。 イラスト的には、馬の方が絵になるので、たいていだれも乗ってない馬だけ描かれていますが。

This is the way the ladies ride;
  Tri, tre, tre, tree,
  Tri, tre, tre, tree!
This is the way the ladies ride;
Tri, tre, tre, tre, tri, tre, tre, tree!

This is the way the gentlemen ride;
  Gallop-a-trot,
  Gallop-a-trot!
This is the way the gentlemen ride;
Gallop-a-trot-a-trot!

This is the way the farmers ride,
  Hobbledy-hoy,
  Hobbledy-hoy!
This is the way the farmers ride,
Hobbledy-hobbledy-hoy!
貴夫人(レディ)の馬乗り。
  ツリイ、ツレ、ツレ、ツレエ、
  ツリイ、ツレ、ツレ、ツレエ。
貴夫人の馬乗り。
  ツリイ、ツレ、ツレ、ツレエ。ツリイ、ツレ、ツレエ。

紳士(ゼンツルマン)の馬乗り。
  ガロップ・エ・ツロット。
  ガロップ・エ・ツロット。
紳士の馬乗り。
  ガロップ・エ・ガロップ・エ・ツロット。

お百姓の馬乗り。
  ホッブルデイ・ホイ、
  ホッブルデイ・ホイ。
お百姓どんの馬乗りやこんなもんぢや、はあ。
ホッブルデイ、ホッブルデイ・ホイ。

訳・北原白秋
  白秋は、この唄に「お馬乗り」という題を付けています。原詩には、どこにも馬を表わす言葉がないのに、 正に「馬のマザーグース」と言える唄でしょう。



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